概要:
- トレンド・ストレングス・インデックス(TSI)は、特定のコイン/資産の現在のトレンドの強さを測定する指標です。
- このインジケーターはトレーダーにとって有用であり、ロングポジションを取りたい場合は強い上昇トレンド(強気トレンド)の確認が重要です。同様に、価格が下落し続けると予想するトレーダーは、ショートポジションを取る前にトレンドが十分に強いダウントレンドであるかを確認する必要があります。
- TSIは将来のトレンドを予測するためのものではなく、自身のトレード・バイアスや現状トレンドの強度を裏付けるために用いるべきです。
あらゆる暗号資産トレーダーが価格変動時に必ず考えるべき重要な問い、それは「このトレンドはどれほど強いのか?」です。そこで活躍するのがトレンド・ストレングス・インデックス(TSI)です。TSIは、現在のトレンドの強さやモメンタムを測定するテクニカル指標です。ボラティリティの高いクリプト市場では、トレンドの強さを見極めることで一時的なノイズと本格的な値動きを区別できるようになります。暗号資産初心者から中級投資家まで、TSIを理解することで確実に優位性を得ることができます。特に、ラリー(上昇相場)がこのまま続くのか、それとも下落が本格的に加速するのか、それとも反転するのか悩んだ経験がある方には有用です。この記事では、トレンド・ストレングス・インデックスのすべてと、暗号資産トレーディングでその威力を最大化する方法について解説します。
トレンド・ストレングス・インデックス(TSI)とは?
トレンド・ストレングス・インデックスは、ビットコイン(BTC)やアルトコインに適用できるモメンタム・オシレーター(勢い指数)であり、トレンドの強さを測定するのに使用されます。ロング注文を狙うトレーダーは、強い上昇トレンドの確認が不可欠です。逆に、価格が下落し続けると考えるトレーダーは、ショートポジションを取る前にダウントレンド(下降トレンド)の強さを裏付ける必要があります。
このようにTSIはトレンドの確認に役立ちます。たとえば、ビットコインがアップトレンド中であれば、そのトレンドが長く続く可能性があるかどうかを測ります。ダウントレンドの場合は、いつ反転する可能性があるかを測定します。TSIは、ビットコインがトレンドの維持に苦戦する可能性のあるサポートラインやレジスタンスラインを監視することで作用しています。サポート(支持線)は買い圧力の強いポイント、レジスタンス(抵抗線)は売り圧力の強いポイントです。これらサポート・レジスタンスに到達した場合、トレンドの強さが弱まり、逆方向への反転が起きることがあります。
TSIインジケーターは長期(1M、1W)チャートにも短期(1D、4H、1H)チャートにも利用できます。ただしTSIは未来のトレンドを予想するものではなく、現在のトレンドの強さや自分のトレード・バイアスの確認に限定して活用すべきです。
TSIはゼロを基準値とし、上限は+1、下限は-1が設定されています。ビットコイン価格がオシレーターの上限付近にある場合、これは強い強気トレンドを示します。下限付近にある場合は強い弱気トレンドを示します。インジケーターがゼロ付近で推移する場合、市場はレンジ(横ばい)相場と判断できます。
TSIは極めてボラティリティの高い指標であり、ポジティブとネガティブの領域の間を高速でオシレート(振動)します。TSIの計算は、13期間と25期間で測定した指数平滑移動平均(EMA:Exponential Moving Average)に基づいています。
オシレーターの上限域は強気、下限域は弱気を示唆します。
繰り返しになりますが、トレーダーは平均値(ゼロ)より上・下のTSI値を探し、強いトレンドを確認します。インジケーターが上限に到達していれば、ビットコインは強い強気トレンドで上昇し続ける可能性があります。下限に到達した場合は、下落トレンドが続くか、サポートで反転する可能性があります。
このインジケーターは単独で用いるべきではありません。なぜなら、暗号資産市場の高いボラティリティや直近データへの偏重が原因です。TSIは、より長期のデータからサポート・レジスタンスを割り出すRSIやボリンジャーバンドなどの他の指標と組み合わせて使うことで、ブレイクアウトやダイバージェンスの発生をより正確に分析できます。
トレンド・ストレングス・インデックス(TSI)の計算式
TSIの計算は、13期間・25期間の指数平滑移動平均(EMA)に基づいています。TSIはシアトルの起業家ウィリアム・ブラウによって考案され、Stocks & Commodities Magazineで最初に紹介されました。以下がTSIの計算式です:
指数平滑移動平均(EMA)は、直近データに大きなウェイトを置く加重移動平均です。TSIもEMAに基づく極めてボラティルな指標で、もともと株式市場で開発されましたが、近年暗号資産マーケットでも広く活用されています。
TSIの投資心理学
トレーダーは、トレンド・ストレングス・インデックス(TSI)を市場判断の自信や検証に使用します。ブレイクアウト時にTSIを確認することで、その動きに本物のモメンタム(勢い)があるか裏付けが取れます。TSIが上昇している場合は、強い上昇モメンタム(強気)を示し、ポジションを維持または増やす判断を後押しします。逆にTSIが横ばい、もしくは価格上昇にもかかわらずネガティブ圏で推移する場合、モメンタムの弱さを示唆し、見直しを促します。
TSIは心理的にも効果があります。強いプラスTSIは強気の気持ちを強化し、長期ポジションへの不安を和らげます。逆にネガティブなTSIは、現状維持バイアスを打破し、損失拡大ポジションからの撤退を促します。
また、TSIは市場全体のセンチメントも反映します。高い値は積極的な買い意欲、低い値は弱気なムードを示します。トレンドの強さを数値で捉えることで、不確実性を大幅に減らし、利益は伸ばして損失は素早くカットする戦略を容易にします。
最も重要なのは、TSIを客観的に扱い、コンファメーションバイアス(自身に都合のよい解釈)を避けることです。TSIからの信号を鵜呑みにせず、仮説の検証・修正に使いましょう。上げで自信を強化し、間違いの際は慎重さを与える──これこそが市場モメンタムを攻略するカギになります。
トレンド・ストレングス・インジケーターの使い方
トレンド・ストレングス・インジケーターは、すべてのスポット市場ペアおよび先物市場ペアで利用可能です。例としてBTC/USDTペアを選択し、画面上部の「インジケーター」をクリックします。
Phemexで最も取引されているビットコインチャート。
検索ウィンドウが現れるので、「Trend Strength Index」と入力してインジケーターを探します。
検索バーを利用して全ての取引指標へアクセス可能。
インジケーターを左クリックすると、自動的にビットコインのローソク足チャート下にTSIが表示されます。
ビットコインチャートの下でオシレートするトレンド・ストレングス・インデックス。
これでTSIインジケーターが有効化されました。チャート上で+1および-1の間をどのように振れるかが分かり、ローソク足のプライスアクションがトレンド強度をどのように反映するか可視化できます。強いトレンドはゼロ(平均値)より明確に上下どちらかへ突き抜けている場合です。たとえば、インジケーターが0から-0.5未満なら強い弱気トレンド、0から+0.5以上であれば強い強気トレンドを示唆します。
長期トレードでのTSI活用
長期的なトレンド強度データを取得する場合は、1D(日足)、1W(週足)、または1M(月足)などのチャートを選び、RSIやボリンジャーバンドといった長期インジケーターと組み合わせて分析しましょう。
今回のデモンストレーションでは、日足チャートにこれらのインジケーターを同時表示します。
ボリンジャーバンド(上)、トレンド・ストレングス・インデックス(中)、RSI(下)
現在のトレンドは弱気(ベアトレンド)であり、インジケーターは重要なサポート付近でリバーサル(反転)の兆しを示しています。TSIは-1の下限付近に横ばいとなっており、リバーサルが近い可能性があります。
RSIは価格が「買われすぎ」「売られすぎ」の水準にあるかを判断します。ビットコインは現在、売られすぎゾーンの下限付近で推移しており、歴史的サポート水準にあります。これは、トレンドの上方向へのリバーサル(反転)が起きる可能性を示唆しており、RSIでも買いシグナルが点灯し始めています。
ボリンジャーバンドは、ブルーカラーでローソク足を包むレンジバンドです。過去の移動平均(MA)データからサポート・レジスタンスを割り出しています。現在、ビットコインは歴史的サポートを下回っており、上方向への反転シグナルが点灯しています。
短期トレードでのTSI活用
スイングトレードなど短期取引では、トレンド方向が「安く買って高く売る」戦略の判断材料となります。1H(1時間足)、15M(15分足)などの短期チャートでトレンドの強度を確認しましょう。以下では1時間足を例に解説します。
この場合、有効な戦略はインジケーターがゼロ平均値(0)に到達するのを待つことです。平均値付近で明確な方向が出たら、その方向にあわせてロングまたはショート注文を出します。TSIは高頻度で上限・下限へ到達するため、中央で推移中がエントリーに最適といえます。
現在の短期チャートでは、もみ合い(レンジ)の値動きが見られます。指標は強い強気トレンドを示しており、間もなく上方向のブレイクアウトが来る可能性があります。しかし、ベアリッシュ・ダイバージェンス(弱気の逆行現象)となる可能性も否定できません。
1時間足チャートのRSI指標によれば、ビットコインは現在もみ合いで、どちらの方向へ動いてもおかしくありません。ボリンジャーバンドも、ローソク足がバンド中央付近で推移しており、直近のブレイクアウト予測は困難です。
プロのヒント:長期チャートデータは短期の価格変動を予測する手がかりとなります。長期的にはビットコインが歴史的サポートで反発した経緯があるため、直近の短期的には上昇ムードが濃厚となります。
TSIのシグナルの見極め方
トレンド・ストレングス・インデックス(TSI)の読み取りは、値が重要なレベルをどう推移しているかが判断ポイントとなります。以下が主なシグナルです。
- ゼロ・クロス(0ライン割/越え):
TSIが0を上抜けたら強気シグナル(モメンタムの上昇)、0を下抜けたら弱気シグナル(モメンタムの下落)となります。 - 閾値の突破:
+25と-25の閾値を目安とするトレーダーが多いです。TSIが+25を超えたら強い強気トレンド、-25を下回れば強い弱気トレンドを示唆します。その中間は比較的弱い動きです。 - ピーク・トラフパターン:
TSIが高値圏でピークアウトし下落しはじめたら、強気モメンタムの減速を示します。逆に安値圏で底打ちし上昇へ転じたら、弱気モメンタムの収束=トレンド反転のサインです。 - ダイバージェンス(逆行現象):
- ブル・ダイバージェンス:
価格が安値更新してもTSIが前回より高い安値を記録した場合、弱気の勢いが弱まっていることを示し、反転シグナルとなります。 - ベア・ダイバージェンス:
価格が高値更新してもTSIが前回より低い高値となる場合、上昇トレンドの弱まり→将来的な反転が予想されます。
- ブル・ダイバージェンス:
- シグナルラインのクロス:
- TSIがシグナルラインを上抜けた場合は強気クロスで上昇モメンタムの強化を示します。
- 下抜けた場合は弱気クロスで下落モメンタムの加速示します。
たとえば、Cardano(ADA)がTSIがゼロ未満で緩やかに上昇し、その後-5から+20へゼロ越えした場合、強気シフトのサインです。続いて価格が新高値をつけてもTSIが前回より低い高値となれば、それはベアリッシュ・ダイバージェンス=上昇トレンドの弱まりを示します。
TSIに0、+25、-25の基準線を引いておけば、トレンド判別が容易です。次に、これらシグナルに基づき具体的に売買判断を行いましょう。
TSI vs ADX: どちらが有効なトレンド強度指標か?
平均方向性指数(ADX)もTSIと同じくトレンドの強度を測る指標です。両方とも、将来方向の予測ではなく現状トレンドの強さだけを定量的に評価します。どちらが優れているか比較するには、例えばビットコインチャートにTSIとADXを同時表示して分析します。
ADXはトレンド強度測定のための代替インジケーターです。
最大の違いは、ADXは0〜+40という広いレンジ幅を持つことです。これによりADXはより幅広いスコープで計測でき、TSIの方がより素早く極端値に達します。また、ADXは2本の移動平均に基づいており、過去の値動きにより踏み込んだコンテキストを提供できます。
両者は併用することでトレンドの強さ確認精度を向上できます。現状は、ビットコインが歴史的サポート付近で上昇へ転換しつつあることを両者が示していますが、ADXはまだ最安値に達していないことを示唆しています。
まとめ
トレンド・ストレングス・インデックス(TSI)は絶対値ベースで、素早く極端値間を振れる特性があります。TSIは未来のトレンド予測ではなく、現状のトレンド確認のみに使うべきです。ビットコインが強い強気トレンドにあると仮定したとき、その強さ測定にTSIが役立ちます。ただし、TSIのみを過信するのではなく、他の指標と組み合わせて判断を下しましょう。TSIの唯一の弱点は、短期のEMAベースで直近のデータ指向に偏る点です。ADXなど、長期性のトレンド強度指標を補助に使うことで精度向上が見込めます。他にもRSIやボリンジャーバンドなど長期性指標との併用で将来の方向性を予測しやすくなります。
この知識を生かすには、信頼できるトレーディングプラットフォームで実践することが不可欠です。Phemexであれば、TSI分析を日々の暗号資産トレードに活かせます。Phemexのトレーディングインターフェースには高機能チャートツール(TSI、RSI、ADXなどインジケーター)が備わっており、お好みの仮想通貨チャート上にTSIを重ねてパラメータも自由調整可能です。ビットコイン、イーサリアムや多彩なアルトコインでも、リアルタイムでトレンドモメンタムを測定できます。
ご不明な点は support@phemex.comまでお問合せください。