Directional Movement Index(DMI)は、トレーダーが市場の上昇トレンドや下降トレンドの強弱を見極めるために使用するテクニカルインジケーターです。DMIは2つの方向性指数で構成されており、通常、平均方向性指数(ADX)と同時に使用されます。よってDMIは、ローソク足チャートの上または下に3本の線で表示されます。
DMIとADXの理解
DMI (Directional Movement Index)とは?
DMIは+DIで表されるPlus Direction Indicator (またはPositive Direction Indicator) と−DIで表されるMinus Direction Indicator (またはNegative Direction Indicator)の2つで構成されています。+DIの線が−DIよりも上にある場合、強気のトレンドを示しています。逆に、−DIの線が+DIよりも上にあるとき、弱気のトレンドを示しています。また、線が何度も交わっているときは市場を特定することはできず、価格は比較的安定して推移しています。
DMI指数のみでは、標準的なローソク足チャートでは判断できないような情報を多く得ることはできません。トレーダーの中には、このクロスオーバーポイントがトレンドの反転を示すことから、売買シグナルとして利用する人もいます。しかし、DMIインデックスは平均方向性指数(ADX)と呼ばれる3本目の線も含んでいます。
ADX(Average Direction Index)とは?
ADXは+DIと−DIで方向性トレンドの相対的な強さを表す指標です。これを読む際は、チャート上の価値を示す軸を参照します。 一般的に、ADXの値が25以上であればトレンドが比較的強いことを示しています。20以下の場合は、トレンドが弱く市場が横ばいであることを示しています。また、市場が激しく上下していて、ADXではどちらかの方向に明確なトレンドを見極められない場合もあります。
DMIとADXの値は、過去14回の取引期間中の価格変動の範囲に基づいて決定されます。この値を自身で計算できる数式もありますが非常に複雑なため、一般的には必要ありません。チャート上のDMIとADXの値をどのように解釈し、売買シグナルに利用するかとういうことだけを理解すれば十分でしょう。
DMIをADXトレーディングに活用する方法
DMIとADXは、使用しているチャートツールによって、1つのインジケータとして表示される場合と2つの別々のインジケータとして表示される場合があります。トレーディングビューで「Average Direction Index」を選択すると、ADX線が表示されたチャートのみが表示され、「Directional Movement Index」を選択すると、DI線とADX線が表示されたチャートが表示されます。
Positive (+DI)とNegative (−DI) Directional Indicators
DMIとADXを取引に使おうと思っているのであれば、見逃せない2つのサインがあります。1つ目は、+DI線と−DI線が交差するポイントで、これはトレンドの反転が起こっていることを示しています。
ただし、+DI線と−DI線が直前の取引で既に何度も交差していたり、非常に接近して進行している場合は、市場が不安定で、ブルもベアもコントロールできていないことを示しているので注意が必要です。+DI線と−DI線が離れているほど、トレンドは強いです。
下のチャートを観察してみましょう。赤い線がADX、青い線が+DI、オレンジの線が−DIです。青色のボックスは明確な弱気のトレンドを示していますが、これはローソク足チャートでも簡単に見ることができます。しかし下部のDMIチャートを見ると、この弱気のブレイクアウトはオレンジ色の−DI線が青色の+DI線から急激に乖離していることで認識することができます。クロスオーバーシグナルに基づいてトレードを行う場合、矢印で示されたポイントは、明らかな弱気のトレンドを示しているため、ショートトレードを行うポイントとなります。
しかし、ADXはトレンドの強さをより明確に示しています。矢印のポイントで取引を行っていた場合、ADXはまだ20を下回っており、トレンドが特に強くないことを示しています。結果的にはそのようになりましたが、よりリスクを嫌うトレーダーであれば、次のチャートの紫の矢印のように、もう少し後にショートポジションをオープンしてADXが弱気のトレンドを示すのを待ったことでしょう。
これは強気のブレイクアウトで反対のシナリオを示す別の例です。このケースでは、強気派が市場をコントロールしており、青い+DI線がオレンジの−DI線から乖離し始めていることがわかります。クロスオーバー指標を使用している場合は、青い矢印が指している場所でロングポジションを取ります。
しかし強気のトレンドをより確信したかったのであれば、下の紫色の矢印で示されるように、ADX線がトレンドの強さを確認するまで、もう少し待ったでしょう。
このケースでは、トレンドがより長く明白であったため、もし少し遅れてエントリーしていたとしても利益を得ることができたでしょう。
DMIとADXを使用するリスクと限界
第一に、DMIとADXは遅行性のインジケーターです。過去の市場の動きに基づいているため、将来の方向性を最も信頼できる形で予測することはできません。さらに、遅行インジケーターであるため市場の状況が変化した時点でトレンドを開くことができるかもしれませんが、ポジションを閉じるためにも使用している場合、DMIやADXが有益な情報を定時する頃には、市場はすでに不利な方向に動き始めている可能性があります。また、ストップロスやテイクプロフィットをどこに設定するかを判断するのも難しいでしょう。
ADX値が25であれば強いトレンドが確認できますが、25以上の状態が長く続くとは限りません。ADX値が25になるのを待ってすぐに取引を行った場合、その後再び25を下回り、市場があなたのポジションと逆行する可能性があります。
トレンドインジケーターに基づいて取引を行う場合、DMIとADXをMACDなどの他のテクニカルインジケーターと併用するのが一般的です。これにより、取引を行う前にトレンドをより確実に把握することができます。
DMIとADXの由来?
DMIとADXは、”New Concepts in Technical Trading Systems “の著者である米国のテクニカルアナリスト、J・ウエルズ・ワイルダー・ジュニアによって1970年代に開発されました。ワイルダーは、相対力指数やPSARなど、現在世界中のトレーダーに利用されているテクニカルインジケーターを考案しました。