トランザクション毎秒 (TPS) はネットワークが1秒間に処理できるトランザクションの数を指し、ネットワークがどれだけ速く取引や交換を承認できるかを示します。平均取引速度はネットワークのリアルタイム取引処理能力を示すため重要な要素です。仮想通貨の取引量が増加するにつれ必然的に平均速度も減少します。
トランザクションはどのブロックチェーンにおいても活動の基盤となる部分です。取引がいかに迅速に処理されるかは、仮想通貨の有用性を決定する上での重要事項となります。
トランザクション毎秒(TPS)とは?
トランザクション毎秒(Transaction per second)、略称TPSとはネットワークが1秒間に処理できるトランザクションの数のことです。ネットワークが高速であればあるほど混雑をうまく処理することが可能です。よって決済効率が高まり、機関や個人などによって導入される可能性が高まります。
Visa TPS vs マスターカード TPS vs ビットコインTPS
- ビットコインは1秒間に7件のトランザクションを処理します。
- Visaは1秒間に平均約1,700件のトランザクションを処理し、24,000tpsに対応可能だとされています。
- Mastercardは1秒間に約5,000件のトランザクションを処理可能だとされるネットワークを利用しています。
ビットコインのトランザクションは現金に近い形で行われます。金融仲介業者を介さずに個人間でやり取りされるのです。また、ビットコインは今のところ広くは導入されていないため使用には取引所を通す必要があります。一方Visaやマスターカードは広く受け入れられていますが手数料が発生します。これらの金融企業は詐欺防止策を提供していますがビットコインは残念ながらそうではありません。ビットコインのトランザクション毎秒こそ、この技術が克服すべきとする課題の1つなのです。
ペイパル vs ビットコイン TPS
ペイパルとビットコインTPSの主な違いはペイパルが銀行やクレジットカードなどの第三者機関のネットワークを介し支払いを行う必要があるのに対し、ビットコインの支払いは仲介機関を必要とせず全関係者が区別なく閲覧可能なオープンソースブロックチェーン上で行われる点です。
またビットコインをペイパルと比較するとトランザクション費用の低さ、取引時間の縮減、取引自由度の高さ、分散型であることなどが利点として挙げられます。しかしアルトコインの中にはこれらの特徴においてビットコインを凌ぐものも存在します。これもまた分散型金融(DeFi)市場が花開くきっかけとなった部分です。
ビットコイン vs 代替ブロックチェーン TPS
多くのアルトコインが次のビットコインとなるべく、デジタル取引を行うための安価な代替手段として名乗り挙げています。これらのネットワークは実際により高速で大きな実用性を提供しています。例えばソラナのトランザクション毎秒は3,000件近くもあり承認時間もほぼ一瞬です。実際にさまざまなブロックチェーンのトランザクション毎秒数量とブロック承認時間を比較してみましょう。
仮想通貨 | トランザクション毎秒 (TPS) | 平均取引(ブロック)承認時間 |
ビットコイン | 3-7 | 10 分 |
イーサリアム | 15-25 | 6 分 |
ソラナ | 2,825 | 0.4 秒 |
ポルカドット(DOT) | 1,000 | 4-5 秒 |
EOS | 4,000 | 0.5 秒 |
コスモス(ATOM) | 10,000 | 2-3 分 |
ステラ | 1,000 | 2-5 秒 |
ドージコイン(DOGE) | 30 | 1 分 |
ライトコイン(LTC) | 56 | 30 分 |
アバランチ(AVAX) | 5,000 | 1-2 秒 |
アルゴランド(ALGO) | 1,000 | 45 秒 |
リップル (XRP) | 1,500 | 4 秒 |
ビットコインキャッシュ(BCH) | 61 | 60 分 |
IOTA | 1,500 | 1-5 分 |
ダッシュ(DASH) | 10-28 | 15 分 |
ビットコインは仮想通貨のイテレーションの原点の一つであり、同コインの哲学とデザインは他のコインの指標となりました。しかしその実装には多くの制限があります。例えばブロック作成に使用される合意形成アルゴリズムであるプルーフ・オブ・ワーク(PoW)はエネルギー消費が多く長い工程を必要とします。一方、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)のブロックチェーンネットワークは高い拡張性、優れた取引速度、安価なガス費用などが実現されています。イーサリアムの場合、開発者はネットワークをPoWからPoSに移行することでトランザクション毎秒数量の増加、エネルギー消費量の削減、ネットワークの拡張が可能になります。これらはイーサリアムを購入し、イーサリアムベースのdAppsへの投資を検討している人にとって投資理論にプラスに働くと考えられるでしょう。
ブロックチェーン拡張性問題 vs ブロックチェーンTPS
ビットコインTPSが低い事によりブロックチェーンは大量の取引を処理できず、結果取引速度が遅くなります。そのため、他のブロックチェーンでは様々な拡張への対応策が取り入れられています。しかし拡張性に影響を与える要素の多くは相互依存の関係にあり何らかのトレードオフが発生するため実現が困難となっています。
「ブロックチェーン拡張性問題を解決する方法」について詳しくはこちらをご覧ください。
まとめ
仮想通貨界の課題はトランザクション毎秒数を増やすことだけではありません。中央集権型データベースは、毎秒数千ものトランザクションを処理できるように装備されています。例えばVisaは約1,700tpsを処理します。よって主な課題としてビットコイン、イーサリアム、その他のブロックチェーンがこれらのスピードに対抗する上で面しているのは高レベルの分散化を維持しながらTPS向上を目指す部分です。
分散型にはパフォーマンスとセキュリティ面で費用がかかります。したがって、拡張性の解決にはブロックチェーンの利点を維持しながらネットワークのパフォーマンスを向上させる必要があるのです。そうでなければブロックチェーンは非効率的なデータベース以上のものになり得ません。しかし、ここで注意すべきはTPSの高いブロックチェーンが必ずしもTPSの低いブロックチェーンより優れているわけではない点です。数多くのブロックチェーンプロジェクトが高いTPSの数字を掲げています。しかしこれらの性能数値はネットワークの他の重要な側面を犠牲することにより達成されたものなのです。