概要
- マス・インデックス(Mass Index)は、米国のトレーダー兼数学者であるドナルド・ドーシー(Donald Dorsey)によって開発された指標で、リバーサル(反転)トレード戦略に特化しています。
- この指標はオシレータータイプであり、そのボラティリティと高感度からStochastic RSI(StochRSI)に似ています。最大の違いは、買われ過ぎ/売られ過ぎのレベルを測定するためのものではないことです。
- インデックスにおける「バルジ(膨らみ)」は、オシレーターが上昇し、その後急速に崩れる現象を指し、これによりトレーダーは反転のサインを把握します。ドーシーによれば、マス・インデックスのゴールデンルールは、ラインが27以上まで上がり、その後26または26.5まで下落するのを待つこと。なお、これは25期間のマス・インデックスでのみ有効です。
- マス・インデックスは直近データに重みを置く複数の指数平滑移動平均(EMA)に基づいており、バリュー投資や短期のデイトレードに適しています。
- MI指標はトレンドの方向性自体を測定しません。トレーダー間の共通認識としては、バルジ発生後にEMAが上向きならロング、下向きならショートと判断します。
- マス・インデックス指標は、Phemexの全ての現物取引および先物取引のチャートで利用可能です。

テクニカルトレーダーは、長年にわたりトレンドの反転を予測するためにさまざまなインディケーターを利用してきました。その中でも、リバーサル(反転)を見極めるためだけに設計された、あまり知られていない面白いインディケーターが「マス・インデックス(MI)」です。1990年代に登場し、独自の価格転換点察知能力から上級アナリストの間で支持を集めています。この記事では、マス・インデックスとは何か、その仕組み、そして2025年の暗号資産市場での使い方について解説します。
マス・インデックスとは?
マス・インデックス(MI)インディケーターは、リバーサルトレード向けのオシレーター系指標です。主に、リバーサルの原理と逆張りのトレード手法に精通したトレーダー向けに設計された高度なインディケーターといえます。ここで言う“mass”とは、アベレージの高値と安値の拡がり幅を指し、これを測定するのが特徴です。パターン認識や買われ過ぎ/売られ過ぎを判定するものではなく、あくまで反転サインに特化しています。
マス・インデックスは、現在のトレンドがどれほど強いか、いつ崩れそうかのコンテキスト(背景情報)を提供します。ドーシーによる指標の初出説明の例え:「マス・インデックスを車のスピードメーターと考えてください。時速160㎞で運転中に速度は分かっても、北に向かってるか南に向かってるかは不明です。」同様に、ビットコイン(BTC)やその他のクリプトチャートを見て、価格から現在のトレンドは分かっても、そのトレンドの「持続可能性」についての情報は不足しています。
直近データに重みを置いた複数の指数平滑移動平均(EMA)をS基準に、マス・インデックスはリバーサル(反転)を予測します。例えば、ビットコイン価格が急騰している場合、いずれ反転が来ると考えられ、そのタイミングをこの指標が特定します。開発者・ドーシー氏によれば、25期間MIで27を超えたらリバーサルが近いとのことです。以下のビットコインの過去データ例で、その妥当性を検証します。
伝統的金融でのマス・インデックス(出典)
マス・インデックスの発明者について
マス・インデックスは米国のコモディティトレーダー兼アナリストのドナルド・ドーシーによって開発されました。1992年、「Stocks and Commodities」誌で発表されましたが、80年代からそのアイデアを語っていました。ドーシーによると、トレンド市場でリバーサルが近づいたとき、価格の動き(幅)が“広がる”ことを発見しました。
このインディケーターは市場のボラティリティに基づくパターン解析を行うものです。ドーシーは「将来のトレンド方向は予測できない」とも警告しており、売買の方向性判断はあくまでもトレーダー自身の裁量に委ねています。トレンドラインの上昇はボラティリティ増加のサインではありますが、必ずしも想定する方向へ反転する保証はありません。そのため、強いトレンド下で特に有効です。
マス・インデックスの計算方法
マス・インデックスの計算式は、2つの指数平滑移動平均(EMA)と高値/安値に基づきます。EMAは直近データを重視する信頼性の高い移動平均指標です。クロスオーバーストラテジー(EMAクロス)は将来のトレンドを予測する上で効果を発揮します。具体的なマス・インデックスの数式は以下の通りです:
計算の基礎となるのは9期間EMAと、直近の高値/安値の差です。9期間EMAは、直近9日間のビットコイン(BTC)や他の仮想通貨価格の平均値を反映します。2本目のEMAは、先ほどの9日EMAの9日EMAを再度計算し、その比率を割り出します。
「マス」とは累積25期間分とし、EMA比率は1になります。反転の「バルジ(膨らみ)」はマス・インデックスが27に達した際に出現するため、正確性を高めるには25期間を基準とします。
Phemexではデフォルトで10期間ですが、日足チャート(1D)で有効に機能させるためには25期間に設定しましょう。次の段落でその方法を解説します。
マス・インデックスの取引での使い方
ここでは、Phemexプラットフォームでマス・インデックステクニカル指標を有効化し、期間長を25に変更して反転とバルジを検出する方法を解説します。まず「マーケット」を選び、任意の取引ペアを選択してください。ここでは例としてBTC/USDTを使い、上部の「Indicators」(インディケーター)を押します:
ドロップダウンから「Mass Index」と入力すれば、自動で検索・抽出されます:

インディケーターを左クリックすると、ビットコインチャートの下にオシレーターとして表示されます:

ここが非常に重要です。「Mass Index 10」は10期間で計算している状態を示しており、本来は25期間が必要です。右側を見ると最大値が12程度ですが、バルジ判定には27まで上昇する必要があります。「設定」をクリックし、期間を25に変更します:

「OK」で変更を確定すると、上限ラインが27以上まで伸びているのが確認できるはずです:

これで信頼性の高いマス・インデックス戦略の学習準備が整いました!
マス・インデックス戦略とは?
ドナルド・ドーシーのオリジナル手法では、リバーサルバルジを示す指標値を27と26.5に設定しています。25期間MIが「27」に達し、「26.5」に下落した際、トレンド反転を予測できます。実際にビットコインチャートで検証してみます:
チャート上でマス・インデックスが27まで達したケースは稀ですが、デイリーチャートでベアリッシュ・ダイバージェンスの発生を的確に予測しています。ただし、最大でも26までしか到達しないこともあり、これは当初の株式市場よりボラティリティの高い仮想通貨市場における運用で考慮すべきポイントです。
この指標は、RSIやStochRSIと形状が似ていますが、トレンド予測には使わず、リバーサル専用にデザインされています。日足(1D)での使用が推奨されます。短期(4時間足等)で使う場合は、9期間と25期間EMAを利用したEMAクロスと組み合わせれば、独自のインサイトも得られます:

このケースではインディケーターが27に到達後、26.5まで急落しています。まさにドーシー流の典型例です。ここでいずれかの方向への反転が想定できます。EMAクロスで長期線(25期間)が短期線(9期間)を下抜け、売りサインを点灯。ビットコイン価格も急落し、上昇トレンドから下落トレンドに転じました。
マス・インデックスが25期間チャートで27を超えるのはごく稀です。価格幅が広がり、指標で反転が確定するまで待てる忍耐強いトレーダー向けのツールと言えるでしょう。
マス・インデックスの戦略と活用ポイント
ドーシーはバルジ判定用に27と26.5という2つの数値(やや恣意的ながら、歴史的に有効)を示しています。マス・インデックス使用時の戦略ポイントは以下です:
- 25期間マス・インデックスを使用:クラシカルなシグナルは25期間で顕著になります。10や15期間では頻発しますが、ダマシ(偽陽性)が多くなります。30以上では反映が遅く信号を見逃します。25は最適な中間点です。
- トレンド市場でのみ有効:明確なトレンドがある局面で効果を発揮します。レンジ相場ではバルジ判定が曖昧、または大きな値動きにつながらないケースも。強いトレンド下でボラティリティ拡大→ブレイク寸前に真価を発揮。
- トレンド系インディケーターとの併用:MI単体で方向性判断せず、移動平均クロスやMACDヒストグラム、他のオシレーターと組み合わせて使うのが一般的。マス・インデックスで「そろそろ反転」と察知後、追加の裏付けシグナルを待ちましょう。
- 全てのバルジで機械的に売買しない:全てのバルジが大転換を示唆するわけではありません。一時の調整や小休止の前触れとなる場合もあります。リスク管理(ストップロス)を徹底し、その他のテクニカル要因やニュース等も考慮しましょう。
マス・インデックスの解釈法(出典)
暗号資産(仮想通貨)市場におけるマス・インデックス解析
暗号資産はしばしば突発的なボラティリティを見せるため、マス・インデックスとの親和性が高い理論的背景があります。たとえば、ブル相場中には日々のレンジ(高値-安値の差)が広がる(大きな値幅をつける)ことが多く、マス・インデックスも上昇します。その後、レンジが急速に収束―つまり価格上昇が続いたままレンジが狭まると、トレンド終焉も示唆されます。逆にベアマーケット最深部では、パニック売りで大陰線が連発しマス・インデックスが急騰、その後売りが落ち着き(レンジ収束)、底値形成が近い合図となります。
一方、マス・インデックス単独でのエッジは限定的という点も要注意です。実際に複数銘柄でバックテストしたところ、簡単なロジックだけでは安定して勝てず、追加フィルターの導入で初めて有効性が出ました。MIはあくまで戦略セットの一要素=“補助シグナル”と認識するのが賢明です。
2025年時点、多くの取引プラットフォーム(PhemexやTradingView等)でマス・インデックスは標準搭載されています。セットアップは一般的に以下の流れです:
- チャートにマス・インデックスを追加(9/25のデフォルト設定が多い)
- 参照用に27と26.5の水平線を引く
- インデックス値がこれらの閾値を上下抜けるタイミングを観察
トレーダーによっては、極端値も注視します。たとえば異常な高水準は一時的で持続困難な極端ボラティリティを示します。とはいえ、ワークするのは「閾値越え」→「反落時」のシグナルがメインになります。
まとめ
マス・インデックスは直感的に分かりにくいため、人気指標とは言い難い面もあります。一見すると強さ系オシレーターに見えますが、本来の用途や最適な期間(25)を理解しないまま使っても、効果は半減します。まずは25期間に調整し、反転専用のMI戦略を構築するのがおすすめです。
多くのトレーダーは、買い・売りサインを発するEMAクロス戦略の裏付け(バリデーション)としてマス・インデックスを併用します。他に、SMA(単純移動平均線)などと組み合わせる手法も有効です。自身のトレードスタイル・時間軸に応じて戦略を練ってみてください。長期・短期いずれのチャートでも成果を上げることができます。
マス・インデックスに組み合わせるべきその他テクニカル指標については、テクニカル分析特集(TAセクション)もぜひご覧ください。





