要約
- 平均足(Heikin-Ashi)は、従来のローソク足チャートとともに使用されるテクニカル分析手法です。
- 平均足とローソク足の違い:平均足は修正された計算式によって、従来のローソク足よりもチャートが滑らかに表示されるという明確な視覚的違いがあります。
- 平均足の主な利点は、チャートが読みやすくなり、トレンドの特定や分析が容易になることです。
- 平均足は平均価格情報やリアルタイム価格を表示しないため、ボラティリティへの反応が遅く、スキャルピングや高頻度取引(HFT)には適していません。
暗号資産市場は価格変動が激しく、ローソク足チャートもノイズの多い「海」のように見えがちです。そこで役立つのが平均足。平均足は、そうした価格トレンドをより分かりやすく視覚化するチャート手法です。日本語で「平均の足」を意味する平均足は、ローソク足チャートの一種で、価格データを平均化することで表示します。つまり短期的なノイズ(=ボラティリティ)を除去した安定したチャートが描画されます。特に暗号資産のような高ボラティリティ市場では、小さな値動き一つに惑わされがちですが、平均足なら大きなトレンドを把握して冷静に取引判断がしやすくなり、感情的な売買も防げます。
平均足(Heikin-Ashi)とは?
平均足は、仮想通貨・株式・コモディティ取引など、さまざまな資産のテクニカル分析時に従来のローソク足と組み合わせて用いられるチャート手法です。平均足は、ローソク足のデータを平均化することで価格変動を滑らかに描写します。標準的なローソク足が各期間ごとの「始値・高値・安値・終値」をそのまま表示するのに対し、平均足は平均値を用いることで極端な値動きを抑えています。
平均足の主な計算方法は以下のとおりです:
- 終値:(その期間の始値・高値・安値・終値)の平均
- 始値: 前の足(ローソク足)の始値と終値の平均
- 高値: その期間の高値・始値・終値のうち最大値
- 安値: その期間の安値・始値・終値のうち最小値
この手法により、同色のローソク足が連続しやすい滑らかなチャートとなり、トレンドや転換点が明確にわかります。平均足は、トレンドの把握やダマシ(フェイクシグナル)の低減に特に有効であり、スイングトレーダーや長期投資家に人気があります。
なお、平均足はインジケーターではなく、単に価格情報を異なる方法で表示するものです。そのため、最終バーの終値が実際の市場価格と一致しない場合があります。
平均足のメリット
平均足の最大のメリットは、チャートを視覚的に読みやすくし、ユーザーがトレンドを特定・分析しやすくすることです。これは、収益性の高い取引の根幹となります。従来のローソク足を滑らかにし、ノイズを大幅にカットすることで実現しています。
トレーダーの間では「トレンド・イズ・ユア・フレンド(トレンドは友)」という格言がありますが、平均足はまさにその本質を端的に表現する手法です。
平均足とトレーダー心理
平均足は、チャートパターンを滑らかにすることで市場の変動に対する感情的な反応を和らげ、トレーダー心理に大きな影響を与えます。通常のローソク足チャートでは、それぞれの足ごとに感情的な売買(緑=安心、赤=不安)に左右されやすく、ちょっとした調整でもパニック売りなどの衝動的行動に繋がります。平均足なら小さい動きが目立ちにくくなり、「大きなトレンドは続いている」と認識できるので、トレーダーの忍耐力や規律も強化されます。
たとえばビットコインの上昇トレンド時、通常チャートだと赤い足が1本出ただけで不安や迷いが生じやすいですが、平均足なら一貫して緑の足が続くため、自信と落ち着きをもって取引継続しやすくなります。また、平均足では、ろうそく足の色の変化がトレンド転換を明確に示すため、小さな値動きに惑わされず本当の転換を見極めやすくなります。
平均足チャートの連続した色の足は、トレーダーのストレスを軽減し、感情的な売買を抑え冷静な対応を促します。ただし、ボラティリティの抑制が“安心感の錯覚”を生み、重大な下落見逃しに繋がるリスクもあるので注意が必要です。
まとめると、平均足は細かな値動きに一喜一憂せず全体のトレンドに集中させてくれるため、特に高ボラティリティな暗号資産市場で有効な手法です。この心理的側面を理解することで、より効果的なトレード戦略が立てられます。
平均足の算出方法
平均足は従来のローソク足チャートと似ていますが、算出方法に特徴があります。
標準的なローソク足はバーとヒゲの形を作り、「始値・高値・安値・終値」を分かりやすく表現しますが、平均足では以下の修正計算式を採用します。
平均足ローソク足の計算方法
終値(Close): (始値 + 高値 + 安値 + 終値)÷ 4
始値(Open): 前のバーの始値と終値の平均((前のOpen + 前のClose)÷ 2)
高値(High): 高値、始値、終値の中で最大値
安値(Low): 安値、始値、終値の中で最小値
平均足チャートとローソク足チャートの比較
見た目は似ていますが、平均足は計算式の違いから、より明快なトレンドが表現されます。

ビットコイン CME先物日足チャート(平均足手法 / 出典: TradingView)
上のチャートのように、平均足はチャートの色(上昇トレンド=緑・下降トレンド=赤)がはっきりと連なります。つまり、下落している日があっても大きな上昇トレンドが維持されていれば緑が続きますし、逆も然りです。こうした特性により、トレーダーは現在のトレンドの力強さを明確に把握・分析できるようになります。
また、ローソク足チャートで表示される「現在価格」と、平均足チャートの現在価格が一致しないケースも多いのが特徴です。ローソク足は終値を重視するのに対し、平均足は平均値を採用するためです。
平均足でのトレード方法
平均足の特徴的な滑らかでシンプルな見た目のおかげで、他のテクニカル分析手法と比べても比較的取引が簡単に行えます。
たとえば、下ヒゲのない緑の足は強い上昇トレンドのシグナルであり、すでに利益が出ているトレーダーは利益確定を急がず静観しやすくなります。さらに上昇トレンドを示すシグナルとして、緑の足が続けばさらなるロングポジションの追加やショートの手仕舞い検討となるでしょう。
トレンド転換は、上下にヒゲのある小さい足ではじめて示唆されます。慎重な取引戦略では、このような足が出現したとき、明確な確認シグナル(コンファメーション)が現れるまでエントリーを待つべきです。
逆に、赤の足(とくに上ヒゲのないもの)は強い下落トレンドのサインとなり、ショートポジションの保持やロングの手仕舞いの判断に有効です。利益中のショートポジションは慌てて手仕舞わず、「色が変わるまで様子を見る」という戦略にも適しています。
平均足はノイズが少なく、他のテクニカル手法に比べてダマシ(フェイクシグナル)が少なくなります。そのため、多くのトレーダーは平均足の色が変化するまでポジションを維持します(ただし、必ずしもトレンド転換を保証するわけではありません)。
平均足取引のベストプラクティス
すべてのテクニカル分析手法と同様に、平均足も他の指標と組み合わせて使うことが最適です。例としては、サポートライン・レジスタンスラインと併用し、明確かつ戦略的な取引ルールを設けることが推奨されます。単独で最大の効果を発揮する手法はほとんどありません。
平均足を活用したエントリー・エグジット最適化の具体的戦略やベストプラクティス:
- トレンドフォロー:明らかなトレンド時はポジションを長く保有。連続した同色の足(例:連続した緑の足)なら早売りせず利益を伸ばす。
- 色の変化でエグジット:明確な色の変化が出たらエグジット。弱いサイン(小さい実体足・色の変化前兆)が出たら部分利確、完全な色転換で全利確する戦略が有効です。
- インジケーター併用:平均足でトレンド判断しつつ、移動平均やRSI/MACDなど伝統的インディケータでモメンタムや勢いを確認することで、さらなる精度向上が期待できます。
- エントリータイミング:トレンド認識には平均足、正確なエントリーポイントには実際の値段(通常ローソク足やより短いタイムフレーム)を使うと効果的です。軽い押し目(プルバック)後を狙うのもおすすめ。
- トレーリングストップ&自動売買ボット:平均足のシグナルに基づきトレーリングストップを設定し利益確定を狙いましょう。上級者なら平均足トレンドに応じた自動売買ボットも利用できます(感情による判断ミスを防げます)。
- マルチタイムフレーム分析:上位足でメイントレンドを見ながら下位足でエントリーポイントを探すと、全体とタイミングが合致しやすくなります。
- レンジ相場の過剰トレード回避:色が頻繁に変わるレンジ・横ばい市場では新規エントリーを控え、明確なトレンド発生まで様子見を徹底するのが得策です。
平均足取引では規律が何より重要です。チャートで示されるトレンドに従い、戦略を守って取引することが成功のポイントとなります。

ノーマルローソク足 vs. 平均足
平均足のデメリット・限界
平均足は便利な分析ツールですが、弱点や制約があります。主なものを理解し注意して活用しましょう:
- 遅行性:平均足はデータを平均化して表示するため、どうしても遅行(ラグ)が発生します。急なトレンド転換(たとえばニュースなどによる急変)があった際、通常のローソク足チャートなら1本の足で大幅変動を示しますが、平均足では次の足が出るまで反映されにくいです。よって、レンジ相場や即断即決を求める状況(ブレイクアウト対応など)には向いていません。他の分析と併用が必須です。
- 保守的すぎる:平均足の最大の弱点は保守的すぎること。価格データを平均化するために、エントリーやイグジットの判断まで時間がかかる=高頻度トレードやスキャルピングには対応できません。本質的にスイングトレーダーや、長めのトレンドを狙う方向けです。
- 精密なエントリー・イグジット不向き:平均足は実際の終値を示さず“平均値”のみ。たとえば平均足で「10,000ドル」と表示されていても、実際価格は「10,200ドル」など大幅に異なる場合も。よって正確な注文・ストップロス設定等は、必ず実態価格チャート(通常ローソク足チャート)で行いましょう。
- 価格ギャップや急変を隠すことがある:暗号資産は基本24時間稼働なので「ギャップ」は稀ですが、マイナーコインや海外取引所の夜間など、ごく短い間に急落・急騰した場合、平均足はこれを滑らかに表示してしまいます。実際には一瞬大きな変動(例:V字リバウンド)があっても目立たない場合があるので留意しましょう。
- レンジ相場で誤シグナル多発:特に値動きがフラットな相場では平均足の色が頻繁に変わり、トレンドが実際には出ていないのに売買サインが錯綜します(「上昇トレンドっぽい→すぐ下降」など)。この場合はサポレジや逆張り戦略への切り替えや、静観が有効です。平均足はトレンド相場では力を発揮しますが、停滞・低ボラ市場では注意が必要です。
- リアルタイム価格の非表示:特にデイトレやスキャルピングなど、1秒単位での価格把握が必要な場合、平均足チャートは不向きです。たとえばローソク足が切り替わらない間にも実際の価格は大きく動いている場合もあるため、正確なレベルのサポート・レジスタンス付近を狙う場合は通常のローソク足で見ましょう。
- インジケーター活用時の注意:RSIやMACD等のテクニカルインジケーターを平均足に重ねて使う場合、その値は“実価格”ではなく“平均足値”を基準に計算されるため、通常チャートでの計算結果と異なることがあります。インジケーターによってはシグナルの出方が変わるため、「実価格を基準」としてインジケーター設定できるチャートツールが望ましいです。
- チャート表示の混乱:初めて平均足に切り替えた際、「実際の価格がどこ?取引量との関係は?」と戸惑う場合があります。平均足は価格表示のみで取引量(ボリュームバー)には影響しません。また、ハンマーやピンバーなど細かなローソク足パターンも平均足では同じようには出現しないため、「通常ローソク足パターン分析」を重視するストラテジーには不向きです。
まとめると、平均足を精密なエントリーや即時反応が求められる用途の“単独判断材料”とするのは避けましょう。全体トレンドを掴む補助・ノイズフィルターとして活用し、必ず実際のローソク足チャートもチェックして総合的な判断を行うのがプロのやり方です。重要イベント発生時はリスクマネジメントを徹底し、過信せず臨機応変な対応を忘れずに。

平均足における強気/弱気(ブル/ベア)センチメント
まとめ
平均足は初心者にも扱いやすく、ノイズを排除してトレンドを明確に示してくれるテクニカル分析手法です。価格データを平均化して表示することで、感情的な意思決定につながる“ノイズ”を取り除く効果があり、初心者でも平均足チャートを見るだけで暗号資産やその他資産のトレンドを掴むことができます。ただし、そのシンプルさが最大の欠点にもなり得ます。平均値で表示されるためリアルタイム価格が無視されがちで、急なボラティリティには反応が遅い――このため、スキャルパーや高頻度トレーダーには不向きです。
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