トロンとはブロックチェーンベースのプロトコルであり、スマートコンタクトを利用したスケーラブルでパフォーマンスに特化したコンテンツ共有プラットフォームを全世界に無料で提供し、「ウェブの分散化」を目指しています。目的は、ネットワークの仲介者を排除することで、コンテンツ制作者とコンテンツ消費者の間のギャップを埋めることです。具体的には、あらゆる種類のカスタム分散型アプリケーション(dApps)をサポートする本格的なオペレーティング・システムになることを目指しています。
トロンプロジェクトの歴史
トロンのプロトコルは元々イーサリアムブロックチェーン上に分散型アプリケーションとして開発されました。このプロジェクトは、2017年末の仮想通貨バブルの絶頂期にイニシャル・コイン・オファリングで7,000万ドルを調達した中国の起業家、Justin Sun氏によって設立されました。
Sun氏はすでにフィンテックや仮想通貨業界で有名だったため、トロンプロジェクトはすぐに世間の注目を集めました。ジャック・マー(アリババ創業者)の愛弟子とも呼ばれるJustin Sun氏はトロン財団を設立する前から、アジアでは非常に有名でした。
Sun氏はかつてリップル中国支社における主任を務めていましたが、これがトロンの評判を高め、この時のネットワークが後にトロンのエコシステムに多大な利益をもたらしました。さらに、プロジェクト開始からわずか数ヶ月後、Sun氏は自らが設立したPeiwoというアプリにトロンを統合し、トロンのアクティブユーザー数をさらに拡大しました。Peiwoは現在約1,000万人のアクティブユーザーを抱え、中国のスナップチャットと呼ばれています。
ICOに頼っていた他のイーサリアムベースプロジェクトとは異なり、トロンは匿名の開発者による分散型ネットワークではなく、著名な技術開発者を起用した専任の社内開発チームによって構築されました。
議論と成功
Sun氏は2018年までに、積極的で時には物議を醸すようなマーケティングを通じて、トロンを時価総額でトップ10の仮想通貨に押し上げました。その最盛期である2018年1月の仮想通貨バブルのピーク時には、トロンのネイティブトークンであるTronix(TRX)の時価総額は150億ドルを超えました。
この輝かしい成功により、トロン財団のメンバーは独自のブロックチェーンを立ち上げるモチベーションとリソースを得ることができました。同年末、トロンはイーサリアムネットワークとERC20トークン規格から、スマートコントラクトをサポートする独自のチューリング完全ブロックチェーンに移行しました。また、独自の技術であるTRC-20トークン規格を採用しています。移行後、トロン財団は世界最大のピアツーピアファイル共有システムであるBitTorrentを買収し、トロンネットワーク上でBTT(BitTorrent Token)を開始しました。
トロンはその歴史において、多くの物議を醸しました。まず、トロンは自社のホワイトペーパーを盗用したと非難されています。2019年、Digital Asset Research(DAR)の研究者は、IPFSやFileCoinといった他の注目すべきプロジェクトからテキストやコードがコピーされている事例を複数発見しました。またトロンは、適切な引用を行わずにコードをコピーしたことで、EthereumJ(Ethereum用のJava実装)のオープンソースライセンスに違反したと非難されました。
2020 年 9 月、The Verge は、Justin Sun氏とトロンの BitTorrent 買収に関する長編記事を掲載しました。The Vergeの記事を書いた記者のChris Harland-Dunaway氏は、18人のBitTorrentの内部関係者に話を聞いたとされています。彼らはSun氏を、ナルシストで自己中心的なリーダーであり、独裁者のように会社を運営し誰の言うことも気にせず、「自分の目標を達成するためには、どのような手段も取る」と評しました。
さらに2018年5月、「Hacker One」というサイバーセキュリティテストサービスがトロンのプロトコル設計に重大な欠陥があることを報告しました。1台のコンピューターがネットワークを妨害するために設定されたリクエストを大量に送信するだけで、トロンのブロックチェーン全体を停止させることができることが報告されたのです。1台のPCで、ネットワーク全体に分散DoS攻撃(DDoS)を行うことができるのです。
トロンブロックチェーンの構造
Tron Virtual Machine(TVM)は、トロンブロックチェーン上で動作する、軽量で安定したスケーラブルなチューリング完全仮想マシンです。ビットコインの7件、イーサリアムの50件に比べ、毎秒2000件のトランザクションを実現できると言われています。
TRON/USDT
しかし、トロンは速度と取引のスループットでは優れているものの、分散性では欠けています。トロンがバイナンススマートチェーンのように高速で低コストを実現できているのは、中央集権型のブロックチェーンであり、合計27人の検証者(Super Representatives)に依存するDelegated-Proof-of-Stake(DPoS)と呼ばれるコンセンサスの仕組みを採用しているからです。
検証者はコミュニティによって選出された特定のバリデーターノードを代表し、ブロックの承認とトロンブロックチェーンの安全確保を6時間にわたって行います。アカウントを凍結したTRXトークン保有者は6時間ごとに検証者の候補者に投票することができ、上位27名がそのラウンドのバリデーターとなります。トロンブロックチェーンは、取引手数料を請求しません。その代わりに、検証者はブロック報酬や新たに鋳造されたTRXトークンによって、トロンブロックチェーンを独占的に確保するインセンティブを得ています。
トロンブロックチェーン上のブロックは3秒ごとに作成され、作成に成功したブロックの報酬は32TRXトークンで、トロンの供給量は1年間で合計336,384,000TRX拡大することになります。ブロック報酬の一部を受け取るために、トロンのユーザーはTRXコインをステークするかネットワーク上のアカウントを凍結する必要があります。
トロンブロックチェーンの活用用途は?
トロンの当初の公約は「インターネットの分散化」であり、中間業者を排除することでコンテンツ制作者とコンテンツ消費者の間のギャップを埋めることでした。
トロンはブロックチェーンプラットフォームを分散型ストレージとして利用してコンテンツのホスティングをより効率的かつ効果的にすることで、これを実現しようとしました。トロンのアイデアは、誰もがそのプラットフォーム上でエンターテインメントコンテンツを所有できるようにし、コンテンツの消費者がメディアクリエイターにTRXトークンを介して作品へのアクセス料を直接支払うことを可能にすることでした。
しかし、現段階ではトロンが当初の目標を達成したとは言い難いでしょう。プラットフォーム上で所有されているデジタルエンターテインメントメディアはほぼゼロで、プロジェクトはゆっくりと、しかし確実に分散型アプリケーションを所有するための標準的な中央集権型エコシステムへと移行しているように見えます。それでも、ブロックチェーン上でのDeFiの活動は比較的少ないです。
トロン(TRX) トークンはどこで購入・保管できるの?
Tronix(TRX)トークンはPhemexを含むほぼすべての中央集権型仮想通貨取引所で購入できます。
TRXトークンを自分のウォレットに保管し日々の活動に使用したい場合は、トロンの公式コミュニティが開発したTronWalletやTronLinkを使用することができます。TRXトークンをコールドストレージに保存したい場合は、Ledger、Trust Wallet、Cobo Walletなどのより一般的なハードウェアウォレットブランドを使用することができます。