ポートフォリオリバランスとは、投資家がポートフォリオ内の資産のバランスを再調整するために使用する戦略です。仮想通貨取引ではこの戦略により、通貨を初期状態に戻すことができます。仮想通貨ポートフォリオのリバランスは、暗号資産の健全な組み合わせを確保し、トレーダーが希望するリスクレベルを維持するのに効果的です。
ポートフォリオリバランスとは?
仮想通貨ポートフォリオリバランスとは、元の、または希望する配分やリスクを維持するために資産配分を再分配することを意味します。トレーダーはポートフォリオ内の資産を定期的に購入または売却することでこれを行うことができます。
例えば、ビットコイン(BTC)イーサリアム(ETH)、チェーンリンク(LINK)、カルダノ(ADA)がそれぞれ25%ずつあるポートフォリオを考えてみてください。BTCの調子が良く比率が30%になり、逆にETHは調子が悪く20%まで落ち込んだと仮定します。この状況では、トレーダーはポートフォリオを元の配分に戻すためにBTCを売り、ETHを買います。
仮想通貨ポートフォリオでは、各仮想通貨の配分はフィアット通貨(USDやEURなど)での価値に基づいています。異なる仮想通貨は異なる価値を持つため、均一の重み付けは各仮想通貨の均一の数量を意味しません。そのためトレーダーが自分の資産がどのように配分されているかを把握するためには、価値ベースのシステムがよりわかりやすい方法となります。
ポートフォリオをリバランスする最適な方法とは?
主に2種類のポートフォリオリバランス戦略があります:定期リバランス/しきい値リバランス
定期リバランス
- 定期リバランスでは、あらかじめ決められた期間でポートフォリオのリバランスを行います。これは最もシンプルな方法であり、初心者に向いた手法です。トレーダーは、リスク許容度に応じて、1時間、1日、1ヶ月に1回、またはその他の一定の間隔でポートフォリオをリバランスすることができます。仮想通貨市場のボラティリティが高いため、リスクを最小限に抑えながらリターンを最大化したいと考えている仮想通貨トレーダーには、より短い時間間隔が適しているでしょう。
敷居値リバランス
- しきい値リバランスとは、ある資産のウエイトが特定の値を超えたときに、ポートフォリオのリバランスを行うことです。前述の4つの資産ポートフォリオの例に戻りますが、トレーダーが好みの目標しきい値を±5%に設定したとします。BTCのウェイトが当初の25%から30%に上昇したり、20%に低下したりした場合、そのタイミングでポートフォリオのリバランスを行います。
トレーダーは、リスク管理とコスト削減のバランスをとるために、この2つの戦略を組み合わせることができます。組み合わせた戦略では、トレーダーはスケジュールに基づいてポートフォリオの資産配分を見直し、資産配分がリバランスのしきい値に達した場合、ポートフォリオをリバランスします。
例えば、トレーダーが1週間おきのリバランス戦略を採用し、毎週土曜日にポートフォリオを見直し、さらにしきい値を10%に設定しているとします。土曜日が来ると、その投資家は資産配分を見直します。その資産の配分が5%だけ変動した場合、投資家はポートフォリオのリバランスを行いません。同様に、中間日に配分が10%変動しても、投資家はポートフォリオのリバランスを行いません。つまりトレーダーは、リバランスの日にしきい値を満たした場合にのみ、ポートフォリオのリバランスを行います。
経験豊富な投資家は、利便性を高めるために自動リバランスツールを使用しています。無料のものもあれば、支払いやサブスクリプションが必要なものもあります。また、ツールによって対応している仮想通貨取引所が異なるため、支払い前にツールの対応取引所を確認することが大切です。
最適なリバランス戦略とは?
定期リバランスを評価するために、ある研究では時間間隔がポートフォリオのパフォーマンスに与える影響を調べました。この研究では2、4、6、8、10個の資産からなる仮想通貨ポートフォリオについて、HODL戦略と1時間ごと、日ごと、週ごと、月ごとのリバランス戦略を比較しました。
この研究では、特に資産が多いポートフォリオでは、リバランスの時間間隔が短いポートフォリオが長いポートフォリオを上回るという結果が出ました。下の図は、リバランス期間が1時間の場合に最も高いリターンが得られたことを示しています。しかし、1時間ごとのリバランス戦略は時間がかかるため、経験の浅いトレーダーには難しいかもしれません。初心者のトレーダーは、より長く管理しやすい時間間隔を選択した方が良いでしょう。
リバランス期間が異なる資産数のポートフォリオに影響を与える影響。パーセンテージはバイ・アンド・ホールド戦略に対するパフォーマンスの向上を示している。 (資料: Shrimpy.io)
2つ目の研究では、異なるしきい値がポートフォリオのパフォーマンスに与える影響を分析しました。この研究では、トレンドを特定するために、1%から50%の範囲のしきい値を使用しています。前の研究と同様、この研究ではしきい値リバランス戦略を用いたポートフォリオとHODL戦略を用いたポートフォリオを比較しました。 下図のように、15%のしきい値を用いたリバランス戦略が最も高いパフォーマンスを発揮しました。
しきい値リバランスがポートフォリオのパフォーマンスに与える影響。パーセンテージはバイ・アンド・ホールド戦略に対するパフォーマンスの向上を示している。(資料: Shrimpy.io)
2つ目の研究もまた、しきい値15%のリバランス戦略が定期リバランス戦略よりも高いパフォーマンスを発揮したことを証明しています。
これらの研究は、特定の仮想通貨取引所の正確なビッドアスクデータと取引手数料を使用しています。トレーディングビューやCoinMarketCapの集約されたデータを使用するトレーダーは、大幅にズレた計算をしてしまう可能性があります。また仮想通貨取引所は手数料や資産価格が異なるため、ポートフォリオのパフォーマンスに影響を与える可能性があります。
なぜポートフォリオをリバランスするのか?
ポートフォリオリバランスの主な目的はリスク管理です。資産配分は、安定した収益を確保するために不可欠な要素です。投資家は、資産価格が上昇傾向にある場合、投資を継続するのが一般的です。しかし、仮想通貨市場は非常にボラティリティが高く、ある資産に長期的に集中していると、その資産価格が反転したときに大きな損失を被る可能性があります。ポートフォリオのリバランスを行う際、トレーダーはパフォーマンスの高い資産から利益を得て、それを他の資産に再投資します。そうすることで、市場の動きに関わらずリスクプロファイルを維持し、利益を得ることができます。
また、仮想通貨ポートフォリオのリバランスは投資家に投資の収益性を高める機会を提供します。パフォーマンスの高い資産を売却し、パフォーマンスの低い資産を購入することで、投資家は「安く買って高く売る」という戦略を活用します。市場が平均に回帰すると、全体的なリターンが増加します。
ポートフォリオリバランスは、投資家が地に足をつけるためにも役立ちます。ポートフォリオリバランス戦略に忠実に従うことで、資産が暴落したときに感情に左右された判断を下したり、資産が値上がりしたときにFOMOを経験したりすることが少なくなります。あらかじめ決められたルールがあれば、投資家は自分の投資計画に集中することができます。
ポートフォリオリバランスの欠点とは?
仮想通貨ポートフォリオのリバランスにはいくつかの欠点とリスクがあります:
- 投資家は、ある資産の強気のトレンドを早期の売りで断ち切り、その後すぐに値下がりした別の資産を購入することがあります。これは「安く売って高く買う」というシナリオを生み、結果的に損失をもた等します。
- ポートフォリオリバランスはポートフォリオ内の資産が価値を生み出している場合にのみ機能します。例えば、あるトレーダーが、BTCが50%、その他のトークンが50%のポートフォリオを持っているとします。しばらくして、トレーダーが自分のポートフォリオを見直してみると、BTCの価格は上昇傾向にあり、他のトークンは下降または横ばいの傾向にあります。ポートフォリオリバランスの原則に基づけば、トレーダーはBTCを売って、もう一方のトークンを買うべきです。しかし、それは下降傾向にあるトークンのためにBTCを売ることを意味します。したがって、ポートフォリオリバランス戦略を取り入れる前に、トレーダーは自分で調査し、投資の価値を検討する必要があります。
- 税制上の要件により、リバランスが面倒になることがあります。国や地域によっては、投資家がポートフォリオリバランスで資産を売却する際に、取引にかかるキャピタルゲイン税の支払いが必要になる場合があります。例えば、米国内国歳入庁(IRS)は最近、仮想通貨を財産に近い資産として分類しました。
- 仮想通貨市場はボラティリティが高いため、投資家は頻繁にリバランスを行う必要があり、コストと時間がかかります。大量の取引を行うトレーダーはこの作業を手作業で行うことができず、仮想通貨税務ソフトウェアを活用する必要がある場合もあります。
- トレーダーはポートフォリオリバランスの際、資産の売り買いに伴って仮想通貨取引所に取引手数料を支払わなければなりません。取引手数料を考慮すると、あまり価値のない仮想通貨ポートフォリオを持つ初心者トレーダーにとって、ポートフォリオのリバランスは利益を減少させる可能性があります。
仮想通貨ポートフォリオをリバランスする方法?
仮想通貨ポートフォリオのリバランスにはわずか3つの手順しかかかりません:
- 初期の資産配分を記録する:リバランス戦略を決定し、好みの仮想資産を購入したら、費やしたお金の総額とポートフォリオの価値を記録します。これらの記録は、将来の比較のためのデータとなります。
- 現在の配分を見直し、決定する:リバランスの日にポートフォリオを見直し、各資産の配分を決定します。次に、現在の資産配分を、当初または希望する資産配分と比較します。配分が大幅にずれている場合は、適切な資産を売買してポートフォリオのバランスを調整します。
- リスク許容度を見直す:リスク許容度に影響を与える市場や生活環境の変化に応じて、資産配分を変更することがあります。市場が強気のトレンドに向かっていると思えば、利益の最大化を図るためにより積極的な資産配分にシフトするかもしれません。一般的に高いリスクを扱える若いトレーダーは、莫大な利益を期待して、あまり確立されていない仮想通貨に投資するかもしれません。また年齢が上がるにつれて、安定した収益を維持するために、より保守的な投資を選択することもあるでしょう。
まとめ
仮想通貨ポートフォリオのリバランスは、トレーダーが取引リスクを管理するために利用する便利なツールです。規律ある投資家は、パフォーマンスの良い資産を売却し、悪い資産を購入することで、利益を維持することができます。トレーダーはその期待に応じて、定期リバランス戦略やしきい値ベースのリバランス戦略に従うか、あるいはリスク管理とコスト削減のバランスをとるために2つの戦略を組み合わせることができます。ポートフォリオリバランスには様々なリスクが伴いますが、リバランス戦略を用いたほとんどのポートフォリオは、HODL戦略を用いたポートフォリオより高い効果を発揮します。