
2026年5月19日、トランプ大統領は連邦準備制度理事会(Fed)および連邦金融規制当局に対し、フィンテックや暗号資産企業がリザーブバンクの決済口座へアクセスできない現状の規則を見直すよう求める大統領令に署名しました。この命令は、保険非加入の預金機関およびデジタル資産を取り扱うノンバンク系金融会社へのアクセス拡大の選択肢を検討し、透明な申請手続きを策定し、提出から90日以内に申請に対する判断を下すことをFedに指示しています。恩恵を受ける可能性が高い企業として、Ripple、Anchorage Digital、Wiseの3社が挙げられています。
XRP保有者にとって、今回の動きは明確な90日間という期間とプロセスが定められた制度上のイベントです。Fedのマスター口座取得は、Rippleの企業向け決済事業にとって大きな進展となり得ます。一方で、XRPトークン自体への直接的な影響については別途慎重に考察する必要があります。本記事ではその点についても触れます。
大統領令の実際の内容
今回の大統領令は、報道でみられるような広範なものではなく、手続き面にフォーカスした内容です。暗号資産企業がFed口座の対象になると明言しているわけではなく、現行の決済口座アクセス要件の見直し、透明な申請手続きの構築、申請受付後90日以内の判断を指示しています。これまで、マスター口座に関する決定は明文化されておらず、申請から数年かかる例も存在しました。
この命令は、主に2つのカテゴリに適用されます。1つ目は保険非加入の預金機関(例:ワイオミング特別目的預金機関やOCC信託銀行)。2つ目はデジタル資産を扱うノンバンク系金融会社(例:ステーブルコイン発行体、暗号資産関連銀行、クロスボーダー決済を行うフィンテック企業)です。
また、連邦取引委員会(FTC)は、PayPal・Visa・Mastercard・Stripeに対し、適法な暗号資産企業のサービス停止について警告を発出しました。これは、決済ネットワークにおける不当な行為や消費者保護の観点からであり、銀行側が暗号資産企業の口座開設対応を避ける抜け道を封じる効果があります。
Rippleの現状とマスター口座の意義
Rippleはこの2年間、米国での事業拡大を進めてきました。2025年12月には米国通貨監督庁(OCC)からナショナルトラストバンクの条件付き認可を取得し、その直後にFedのマスター口座申請を行いました。同社の米ドル建てステーブルコイン「RLUSD」は時価総額約16億ドルに成長し、「Ripple Payments」やXRP Ledgerと並び、米国戦略の重要な柱となっています。
Fedのマスター口座はこれら戦略を統合する上で不可欠な要素です。未取得の場合、Rippleはクロスボーダー決済の米ドル部分を提携銀行経由で決済せざるを得ず、手数料やリスクが増加します。一方、Fedへの直接アクセスがあれば、中央銀行にドル準備金を保有し、ネイティブに決済ができ、JPMorganやCitibankと同様のインフラでRLUSDを運用できます。
クロスボーダー決済は年間約190兆ドル規模の巨大市場ですが、従来はコルレス銀行やSWIFTを通じて1~3日かかっていました。Ripple Paymentsは90以上の送金ルートで数秒で決済できるものの、米ドル部分では国内銀行パートナーが必要でした。マスター口座取得でこの障壁が取り払われます。今回の大統領令で取得が保証されたわけではありませんが、プロセスと期間が明確化されました。
Anchorage DigitalとWiseも手続き上恩恵を受ける企業です。AnchorageはOCC認可の暗号資産銀行で、ビットコインやイーサリアムETFのカストディも担当。Wiseは年間約1300億ドルを国際送金しており、2022年からFedアクセスを求めています。今回の手続き改革は特定企業への便宜提供ではなく、構造的な変化と評価されています。
Rippleの進展とXRPトークン需要の乖離
多くのXRP関連記事で見落とされがちな点として、Rippleがマスター口座を獲得しても、XRPトークンの需要が自動的に大幅増加するわけではない点が挙げられます。
Rippleの企業決済フローは、特定ルートでXRPをブリッジ資産として利用していますが、多くの場合は両端とも法定通貨で決済し、XRPが数秒間流動性供給に使われるだけで、保有資産として積み上がることはほとんどありません。
マスター口座取得により、Rippleが新たな米ドル決済のユースケースをXRP LedgerおよびオンレジャーのXRP流動性経由で処理するかどうかは、企業側の判断となります。同社はXRPLベースでの決済拡大を意図しており、約400億XRPをエスクロー管理しています。もし新たな機関決済がXRPL上で実行されれば、流動性状況に変化が生じますが、RLUSD中心で処理される場合はXRPトークンへの直接的波及は限定的となります。
2026年5月20日時点でXRPは2.10ドル付近で推移しており、大統領令のニュースで約6%上昇しましたが、2025年7月の過去最高値3.65ドルには達していません。直近のSEC-CFTC共同商品規制(2026年3月)以降も、規制関連ニュースで一時的な価格上昇後にレンジへ戻る動きが続いています。今回も同様のパターンとなる可能性があります。
FTCによるデバンキング警告の意義
今回の発表では、FTC(連邦取引委員会)による暗号資産企業へのデバンキング警告も含まれており、米国暗号資産業界が直面していた課題解消に寄与します。これまで、主要銀行が規制圧力を理由に暗号資産関連企業との取引を中止する「Operation Chokepoint 2.0」と呼ばれる動きがありましたが、明文化されていませんでした。
FTCがPayPal・Visa・Mastercard・Stripeに発出した警告は、リスク根拠なしに合法的な暗号資産企業との取引を中止することは不公正または誤認行為とみなされる可能性がある、という内容です。これら企業は米国のカード・決済アプリ取引の大部分を担っています。Rippleにとっても、RLUSDの流通や企業顧客がこれらネットワークに依存しているため、重要なポイントとなります。
この方針によって、すべての暗号資産企業が直ちにカードブランド等と提携できるわけではありませんが、最大手決済ネットワークが暗号資産関連企業を通常の金融企業と同等に扱うという連邦の姿勢が明確になりました。Fedアクセスの新制度と合わせ、暗号資産企業が規制下の決済システム内で活動できる初の枠組みが成立した形です。
90日間で注視すべきポイント
Fedへの申請プロセスは、各申請ごとに完了時点で90日間の審査期間が設定されます。従って、スケジュールは分散しますが、今後の主なカタリストを以下にまとめます。
| 期間 | カタリスト | 確認できる内容 |
|---|---|---|
| 5月下旬~6月 | Fedによる申請手続きの改定公表 | 大統領令が実務的に実施されているか |
| 6月~7月 | 既存申請(Ripple・Anchorage等)への初回手続き判断 | 90日ルールが厳格運用されているか |
| 2026年第3四半期 | マスター口座の条件付き承認第1号 | 実際の機関アクセスの開始 |
| 随時 | RippleによるXRPLベースの米国決済発表 | マスター口座がXRP需要に反映されるか |
条件付き承認が主要なカタリストとなります。承認時点で、遵守事項や資本要件・報告義務リストが提示され、最終的な口座開設はその条件充足が前提です。市場では承認時点が実質的なニュースと見なされる傾向にあります。
一方で、最初の申請却下や90日超の審査延長が発生した場合、手続きが骨抜き化するリスクもあるため注意が必要です。
よくある質問
トランプ大統領令でRippleのFed口座取得は確定しますか?
いいえ。大統領令は90日決定期限と透明な申請手続きを定めますが、最終的な審査・承認はFedが個別に判断します。Rippleは有力候補の一つですが、必ずしも自動承認ではなく条件付きとなる可能性もあります。
2026年3月のSEC-CFTC商品判定と何が違いますか?
商品判定でXRPの法的分類が明確化され、SECによる将来の執行リスクはなくなりました。トランプ大統領令はRipple社が米国決済インフラへ直接接続できるかどうかを扱うもので、両者は相互補完的な意味合いです。
Rippleがマスター口座承認を受けるとXRP価格は動きますか?
発表時点では反応が予想されますが、その後の動向はRippleが新規決済をXRP Ledger経由でどれだけ処理するかによります。RLUSD中心の場合はXRP需要への波及は限定的となる可能性があります。
将来の政権交代で大統領令が覆ることは?
大統領令は新大統領が就任初日に撤回可能です。90日ルールや申請手続きも法制化されたものではありません。現在審議中のCLARITY法案が成立すれば、より恒久的な枠組みとなります。
まとめ
今回の大統領令により、Ripple・Anchorage・Wiseは無期限の待機から90日間の明確な審査期間に移行します。条件付き承認が最大の注目ポイントであり、今後はFedの申請手続き改定(6月下旬)、初回判断(夏)、条件付き承認(第3四半期)が主要なイベントです。Rippleが承認を得た後、実際にどれだけ新規米国決済がXRPL経由で行われるかが次の焦点となります。構造的な変化は現実的ですが、XRPトークンの上昇余地は今後の企業判断次第です。
本記事は情報提供のみを目的としており、投資助言を意図したものではありません。暗号資産取引にはリスクが伴います。取引判断はご自身で十分ご検討のうえ行ってください。





