
SpaceXは、8月6日(木)に
6.14%上昇して114.92ドルを記録しました。この日は、
9億1,150万株のインサイダー保有株が初めて売却可能となった、6月のIPO以来初のセッションでした。その後も値上がりを続け、8月7日(金)にはさらに
15.97%上昇して133.27ドルに到達。2日間で
23.09%の上昇となりました(水曜日の終値は
108.27ドル)。ロックアップ解除とは、インサイダーや初期投資家が保有する制限付き株式が市場で売買可能になる日のことを指します。一般的には、この日を迎えると大量売却による需給悪化で株価下落が懸念されますが、今回SpaceXではそのような事態は起こりませんでした。 市場は数週間前からその逆の結果を予想していました。SpaceX株はロックアップ解除直前の時点で、6月の高値から既に約52%下落していました。特に前日の水曜日には、上場後初の決算でStarlinkの加入者数が期待に届かなかったことで、1日で13.61%安となり、108.27ドルで取引を終了。それにもかかわらず、2つの材料がこの流れを180度転換させました。そのうち1つはロックアップとは無関係です。 -
木曜終値:SpaceXは6.14%上昇し114.92ドル(取引量2億5,270万株、前日の2億700万株から増加。インサイダー売却解禁当日) -
金曜終値:SpaceXは15.97%急騰し133.27ドル(取引量2億3,740万株。上場以来最大の単日上昇) -
水曜108.27ドル→2セッションで+23.09%。先週の下落幅の過半数を2日で帳消し。 -
木曜日に9億1,150万株が売却可能となる。1セッションで流通株式を2倍以上に拡大。 -
Terafabチップ工場の初期投資額は168億ドル。同週に発表されたSpaceXとTeslaによる半導体複合施設の第一段階。 この記事では、2セッションで何が株価を動かしたのか、皆が予想した売り圧力がなぜ現れなかったのか、そして次回のロックアップ解除で同様の展開となるには何が必要かを解説します。
3セッションで実際に何が起きたか
このシナリオの経緯も結果同様に重要です。SpaceXの上場後初となる四半期決算発表は
8月4日(火)の取引終了後で、資本支出
184億ドル(うちAIおよびxAIインフラ関連が
158.3億ドル)、Starlink加入者数は
1,200万人と見積もりの
1,219万人を若干下回りました。これを初めて織り込んだのが8月5日(水)で、株価は13.61%下落して108.27ドルと、上場来安値で取引を終えました。これは、期待以上のAI関連投資額と加入者未達を嫌気した動きです。
| セッション |
終値 |
変動率 |
出来高 |
| 8月5日(水) |
108.27ドル |
-13.61% |
2億700万 |
| 8月6日(木) |
114.92ドル |
+6.14% |
2億5,270万 |
| 8月7日(金) |
133.27ドル |
+15.97% |
2億3,740万 |
木曜日は数週間にわたり市場が注目していた日でした。弊社でも
SpaceXが乗り切るべきロックアップ解除として事前に特集。この日は、初期従業員、ベンチャーファンド、IPO前投資家が保有する9億1,150万株が初めて売却可能に。それにもかかわらず、株価は6.14%上昇し取引量も急増。金曜日には15.97%の急騰で133.27ドルとなり、インサイダー売却ウィンドウ解放直前の水準を上回り、6月の公開価格である135ドルからわずか1.4%安の水準で週を終えました。
なぜ売り圧力は発生しなかったのか
ロックアップ解除日当日、CNBCも「SpaceXが試練を迎える」と報道しましたが、実際には株価は容易く乗り切りました。新たに売却可能となった保有者の売りは市場が想定したほどでなく、この「供給過剰懸念」と「実際の供給量」のギャップが2段階目の大幅上昇を導きました。ロックアップ解除で売りが予想された銘柄が極端に売り込まれていた場合、実際の売りが少なければショートポジションの買い戻しが発生し、これが追加の買い圧力となるため、需給が一気に好転します。この現象は機械的な理由もあります。新たに解禁された株式はSpaceXのパブリック・フロート(市場で自由に取引できる株数)を約2倍以上に拡大し、全発行株式の4.9%→11.8%へと上昇しました(CNN Business同週レポート)。理論上フロートが大きくなれば売り圧力増となるはずですが、2カ月間にわたり「薄商い」の状態が続いていたため、上昇・下落いずれの方向にも大きく振れやすい地合いだったことも重要です。IPOリサーチャーのJay Ritter氏も、ロックアップ解除時の実売が想定より少なければ株価上昇をもたらすことがある(逆も起こりうる)と指摘しています。
Terafab発表がもたらした第2の独立材料
売却圧力が静かに通過したことは物語の半分に過ぎません。同時期にSpaceXと
テスラは、テキサス州グライムズ郡を「Terafab」半導体製造工場の建設地と正式発表。TechCrunchなど複数メディアが総額
168億ドルの初期投資、敷地面積1億平方フィート超・地元雇用約3,000人規模と報道しました。目的はチップ需要への対応。SpaceXとテスラ両社によるAIコンピュート需要(Starlinkの地上・宇宙インフラ、テスラのOptimus・Cybercab、xAIのモデル開発)が自社で1テラワット以上に到達、これは現状の世界全体の半導体供給能力を上回ります。インテルもこのプロジェクトへの参画意向を示しており、
自社ファウンドリー課題の最中にも関わらず協業を打ち出すのは異例です。SpaceXのように宇宙経済の中核を担う企業による数十億ドル規模の自前サプライチェーン構築は、今後10年を見据えた成長ストーリーとして投資家から強い期待が集まり、これが金曜の株価上昇加速の大きな要因となりました。
真の教訓:「売却可能」と「売却」の違い
本ロックアップに関する過去記事でも意図的に「売却可能」という表現を用いました。8月6日に最大20%の制限株が売却対象となる…とは書きましたが、実際に売却されるとは一度も明言していません。「売却可能」とはあくまで法的に売却できる資格を得ただけであり、実際に売却するかどうかは全く別の判断です。この違いは、ロックアップ日を前にポジションを取るトレーダーにとって重視すべき論点となります。次回以降、ロックアップ日を見たニュースが「即・売り合図」として扱われる場合、このような「ギャップ」を思い出すべきです。8月6日直前にフロートが極端に薄かったことと株価下落が進んでいたことで「大量売却懸念」は合理的でしたが、実際には解禁株保有者の多くが大規模売りを選択しなかったというだけの話でした。
12月の追加解禁で何が変わりうるか
SpaceXのロックアップ解除スケジュールは一度の「崖」ではなく段階的に進み、12月までに流通フロート比率は全株式のおよそ40%に拡大します。今回のトランシェが混乱なく通過したことは、あくまで限定的な条件下での話です。12月の追加ステップ時に株価が直前の上昇トレンドを維持していれば、初期投資家や長期保有者が利益確定に動くインセンティブは今回より格段に強くなります。想定すべきなのは、「急落後」ではなく「上昇後」に新たな売却解禁が到来した場合、とくに今後テストされていない新たな需給環境では各ステップごとに個別の展開となりえます。リスク選好の波や金利動向(7月雇用統計ミスによる9月利上げ先送り=弊社Fedオッズ解説記事参照)が全体のリスク資産相場に影響する点も押さえておきましょう。
よくある質問
ロックアップ解除とは何が起こるのですか? 制限付き株式(インサイダー・従業員・初期投資家保有分)が初めて市場で売買可能となります。ただ「売却可能」イコール即売りを意味するわけではなく、実際にどれだけ売却需要が出るかは既存需要とのバランス次第です。
SpaceX株はロックアップ解除でなぜ下落ではなく上昇したのですか? 9億1,150万株の売却が「予想よりはるかに少なかった」ため、空売りしていた投資家は買い戻しを迫られ、それが買い需要をさらに押し上げました。加えて168億ドル規模のTerafabチップ工場発表も重なり、結果として2セッション合計で23.09%上昇しました。
SpaceXのTerafabチップ工場とは? SpaceXとテスラによる共同半導体工場計画。テキサス州グライムズ郡に建設、初期投資額168億ドル・敷地1億平方フィート・雇用約3,000人規模。両社のAI・コンピューティング需要(1テラワット超)に向けた自社サプライチェーン確保が狙いです。
2026年8月時点で、まだロックアップ中のSpaceX株は何株? 8月6日トランシェで9億1,150万株が解禁済みですが、ロックアップ解除は段階的に継続し、12月には流通フロート約40%到達見込みです。
SpaceX株へのエクスポージャーをご検討の方は、各段階を個別イベントとして評価しましょう。
まとめ
SpaceXのロックアップ解除は、市場が予想した混乱的な下落を起こすことなく通過。その上、時を同じくして発表された168億ドルのチップ工場材料が重なり、2日間で23.09%もの上昇を演じました。もし木曜終値114.92ドルを維持できれば、実需反映の再評価とみなされます。一方、108.27ドル水準への値戻しと出来高増加があれば、「遅れて売りが出ただけ」というシナリオになります。SpaceXは1週間に2度もポジティブニュースで急騰した実績があり、今後は12月のフロート拡大時、より高値圏でどれだけ売却インセンティブが強まるかが新たな焦点となります。ロックアップ解除での相場動向が本格的に「終了」したと決めるには、114ドルライン近辺の調整時に出来高推移をじっくり見極める必要があるでしょう。
本記事は情報提供のみを目的とし、金融・投資アドバイスではありません。暗号資産取引は高いリスクを伴います。必ずご自身で調査し、納得のうえ取引を行ってください。