2026年2月20日、数十年に一度の貿易政策上の大きな変化が市場を揺るがしました。米国最高裁判所は6対3で、トランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき発動した広範な関税は違法であると判断しました。これに対し、トランプ大統領は数時間以内に反応し、1974年通商法第122条に基づき新たに10%の世界的な関税を大統領令で導入しました。さらに翌日には、法律で認められた最大値である15%に引き上げました。
ビットコインとは は、この発表で一時66,500ドルまで下落しましたが、その後68,000ドルに回復し、再び下落、再び上昇と変動を見せました。2月22日現在、BTCはおよそ68,000ドルで推移し、48時間の間で大きな変動はありませんでした。
この控えめな反応には意味があります。ここでは何が起こったのか、なぜBTCが下支えされたのか、トレーダーが次に注目すべき点を解説します。
最高裁判所の判決内容
最高裁判所は、IEEPAが大統領に関税を課す権限を与えていないと判断しました。ロバーツ長官は、これほど大規模かつ広範な関税をこの法律で課した大統領は過去にいないと述べました。
この判決は、トランプ大統領の関税政策の大部分の法的根拠が失われたことを意味します。2025年4月の解放記念日に発表された「相互」関税や、その後の各国との交渉による関税の多くはIEEPAに基づいていました。J.P.モルガンによると、IEEPAに基づく関税が米国の関税増加分の約61%、年間約1,800億ドルを占めていたとのことです。
この判決により、多くの国への関税が即時無効となりました。EUもIEEPAによる15%関税を米国との協定で認めていましたが、今回の判決で失効しました。中国は25%の既存関税に加え、IEEPAによる10%関税が2重に課されていました。
数時間以内に輸入業者から1,000件以上の返金請求訴訟が提起されました。財務省は2025年12月時点でIEEPAに基づく関税で1,330億ドル超を徴収しており、返金の可否は未解決です。財務長官のベセント氏は「米国民に直接返金されることは想定していない」と発言しています。
トランプ大統領の対応
トランプ大統領は迅速に行動しました。2月20日(金)夜、新たに通商法第122条に基づく10%の世界的関税を発表。同法では最大15%まで150日間の一時的な追加関税が認められています。
翌21日朝、トランプ大統領はTruth Socialにて、関税率を最大の15%に引き上げると発表し、最高裁判決を「馬鹿げていて、米国に不利」と非難しました。
新しい関税体制の主なポイントは以下の通りです。
- 15%の関税は2月24日午前0時1分(米東部時間)より発効、150日間の一時措置です(議会延長無ければ終了)。
- 一部農産品(牛肉、トマト、オレンジ)、重要鉱物、医薬品、一部電子機器、乗用車は除外。
- Section 232(国家安全保障)による鉄鋼・アルミ・自動車関税には影響なし。
- 今後、Section 232やSection 301(不公正取引)による追加関税も検討中。
- 多くの国にとってはIEEPA時代より低い15%(例:ブラジルは50%→15%、インド・カナダ・中国・南アフリカも一時的に低下)。一方、アルゼンチン、オーストラリア、サウジアラビア、英国などは従来より高くなります。
ビットコインの反応
48時間にわたるビットコインの値動きは「耐性」を示しました。
| 時刻 | 出来事 | BTC価格 |
|---|---|---|
| 2月20日 10:00(ET) | 最高裁判決発表 | $66,900(初期下落) |
| 2月20日 10:15 | 「関税無効化」報道で反発 | $67,800 |
| 2月20日 11:00 | 複雑性が認識され、上昇一服 | $67,000 |
| 2月20日 午後 | トランプ新関税10%発表 | $67,200-$67,800 |
| 2月20日 夜 | 大統領令署名 | ~$67,800 |
| 2月21日(土) | 関税15%へ引上げ | ~$68,000、その後約1%下落 |
| 2月22日(日) | 週末取引 | ~$67,900-$68,000 |
66,500~68,000ドルの狭いレンジで推移し、伝統市場が大きく動く中でもBTCはほぼ横ばいでした。S&P500は0.69%、ナスダックは0.9%、ダウは231ポイント上昇、欧州株式は最高値を更新。ドルは弱含み、国債利回りは財政赤字懸念で上昇しました。
BTCはこうした伝統的資産の上昇に追随しませんでしたが、15%への関税引上げにも大きく下落しなかったのが注目点です。2025年4月の「解放記念日」関税発表時はBTCもリスク資産とともに急落しましたが、今回は反応が限定的でした。
なぜBTCは予想以上に底堅かったのか?
BTCの下落が限定的だった理由は複数あります。
関税疲れ(Tariff fatigue) 市場は2025年4月以降、関税関連ニュースを織り込み済みです。「TACOトレード」(Trump Always Caves Or Oscillates)というウォール街の俗語もあり、極端な結果を予想せず、実際の施行を見極めてから動く傾向が強まりました。
多くの国にとってネットの関税負担が減少 一見15%は高いものの、IEEPA時代の25~50%より低い国が多いです。ブラジルは50%→15%、インドも同様。全体としては貿易摩擦の純減となりました。
BTCはすでに売り込まれていた 2026年2月上旬にBTCは60,001ドルまで一時下落し、2025年10月の高値から29%安。Fear and Greed Indexは「極度の恐怖」である9でした。バンエックのリサーチでも「売り圧力の枯渇」が指摘されていました。
現物ビットコインETFの資金流出が一服 2月19日に1.33億ドルの流出があったものの、最高裁判決前後で売りが止まった兆しが見られました。ETF資産残高も1,250億ドルから940億ドルへ減少していました。
いわゆる『マネープリント』論 バンエックのシーゲル氏は、関税収入が減少し返金義務が生じる場合、財政赤字補填のためにドル増刷が必要になる可能性を指摘しています。これを「BTCにとって長期的に支えになる」と解釈する投資家もいます。
過去の関税ショックとの比較
| 関税イベント | 日付 | BTCの反応(48h) | S&P500(48h) |
|---|---|---|---|
| 解放記念日関税発表 | 2025/4/2 | -8%~-12% | -5%~-8% |
| 中国関税145%へ拡大 | 2025年4月 | -5% | -3% |
| 解放記念日関税の一時停止 | 2025年4月 | +8% | +5% |
| グリーンランド/欧州への関税警告 | 2026年1月 | -2% | -2% |
| 最高裁判決+15%関税 | 2026年2月20-22日 | -1%~変わらず | +0.7% |
このように、関税関連ショックのたびにBTCの反応は徐々に小さくなっています。最初のショックが最も大きく、以降は新たなニュースによる追加インパクトは限定的です。
今後トレーダーが見るべきポイント
150日ルール Section 122による関税は150日後(2026年7月下旬頃)に自動失効。議会が延長しなければトランプ大統領の一時的関税権限も失われます。
Section 232・301調査 商務省による特定産業向け追加関税(医薬品や電子機器など)も検討中。特定分野では今後もリスクが続きます。
返金訴訟 1000件超の返金請求訴訟が進行中。仮に1,330億ドルが返金されれば「偶発的な財政刺激」となり、リスク資産やBTCに資金流入の要因となる可能性も。
中国の実質関税率 中国は現状25%(既存)+10%(Section122、15%に引き上げ予定)で合計35%。IEEPA時代の45%からはやや低下したものの、依然高水準で米中摩擦は継続。
BTCの66,000~68,000ドルレンジ このレンジを上抜け(68,500ドル超、出来高伴う場合)は関税リスクが織り込み済みとみなされる可能性。逆に66,000ドル割れなら、他のマクロ要因(GDP減速・インフレ・地政学リスクなど)が相場に影響を与えているシグナルとなるでしょう。
よくある質問
最高裁判決でトランプ氏の関税が全て無効になったのか?
いいえ。IEEPAに基づく関税のみが対象です。Section 232(国家安全保障)による鉄鋼・アルミ・自動車関税や、他の法的根拠による各国向け関税は継続します。
15%世界関税はビットコインにどう影響するのか?
直接的な影響は限定的です。暗号資産は物理的な輸入品ではないため、関税の対象外です。ただし、関税上昇はインフレ期待や経済成長の減速をもたらし、市場心理に影響を与えることがあります。一方、ドル安や財政赤字拡大は、BTCに注目が集まる要因ともなり得ます。
ビットコインは関税不確実性のヘッジとなるか?
データは一貫していません。2025年4月の「解放記念日」ショック時には、BTCも株式と同様に下落しましたが、2026年2月の最高裁判決時にはBTCはほぼ横ばいでした。ビットコインはリスクアセットからより複雑な存在へと変化しつつありますが、ゴールドのようなマクロショックの絶対的なヘッジとは言い切れません。
まとめ
最高裁判決でトランプ大統領のIEEPA関税は無効となり、代わりに通商法第122条による最大15%の関税が導入されましたが、ビットコインはほぼ動きませんでした。
BTCはすでに売り込まれていたこと、ネットでの関税負担の低下、多くの投資家が関税ショックに耐性を持ち始めていることが背景です。Fear and Greed Indexは「極度の恐怖」状態だったため、これ以上の下落余地も限定的でした。
トレーダーにとっては、明確なレンジとブレイクアウト水準(上は68,500ドル超/下は66,000ドル割れ)が意識されます。150日ルール、Section 232/301調査、返金訴訟が次の注目点となります。
米国大統領が最高裁判事を公然と批判し、数時間で関税を引き上げるような状況下でもBTCが68,000ドルを維持しているのは、いわば「実需で下支えされた耐性」の表れです。買いが始まるかは別として、現在は売り圧力が一巡した状態といえるでしょう。
本記事は情報提供のみを目的としており、金融・投資助言ではありません。暗号資産市場は高い変動性とリスクを伴います。ご自身で十分に調査・検討の上、取引判断を行ってください。






