重要ポイントまとめ
以下は、MicroStrategy(Strategy Inc.)のビットコイン財務戦略および2026年2月初旬時点の財務状況に関する要点です。
総保有量: 2026年2月8日時点で、同社は714,644 BTCを保有しています。
取得コスト: これらの資産は総額543.5億ドルで取得されており、平均取得価格は1BTCあたり76,056ドルです。
資金調達手段: 同社は主に資本市場からの資金調達(ATM株式発行や社債発行)を通じてビットコインの取得資金を得ています。
会計処理の変更: 2025年1月1日以降、ASU 2023-08の導入により、ビットコインは公正価値で評価されるようになりました。これにより、市場変動時の損益計算書の変動性が増しています。
独自指標: Strategy Inc.はビットコイン・パー・シェア(BPS)やBTC利回りなどのKPIで、そのビットコイン保有状況の推移を測定しています。
投資代理リスク: 同社株式はビットコインの直接保有を示すものではありません。資本構造、希薄化、優先株主の権利などにより、株価とビットコインの市場価値が大きく乖離する場合があります。
MicroStrategyのビットコイン保有概要
2026年2月9日提出のForm 8-Kによると、Strategy Inc.は714,644 BTCを保有しており、取得総額は543.5億ドル、平均取得価格は76,056ドル(手数料等込み)です。同報告書では、1,142 BTCを9,000万ドルで追加取得し、平均取得価格は78,815ドルと記載されています。
同時に、ATMプログラムによるクラスA普通株61万6715株の売却で8,950万ドルの純収入を得ており、この資金で当該期間のビットコイン購入を実施しています。2026年2月10日時点のビットコイン価格はおよそ69,401ドルです。
保有ビットコイン(714,644 BTC)を踏まえると、市場価値は約496億ドルとなり、総取得額(543.5億ドル)との差は約▲48億ドルとなります。
MicroStrategyのビットコイン戦略構築の経緯
MicroStrategyのビットコイン戦略は2020年、企業資金をビットコインに割り当てる決定から始まりました。SEC提出の8-Kによれば、2020年8月11日に21,454 BTCを2億5000万ドルで購入したと発表しています。
2020年末にはすでに大きく規模を拡大し、2020年12月21日時点で70,470 BTC(約11.25億ドル、1BTCあたり約15,964ドルで取得)を保有していました。
以降、同社のビットコイン保有量は数万BTCから数十万BTCへと拡大し、2026年2月初旬には70万BTC超になっています。2025年第4四半期時点の報告では2月1日時点で713,502 BTC(総取得額542.6億ドル、平均76,052ドル/BTC)を保有し、2026年1月だけで41,002 BTCを取得したと記載されています。
数日後の2026年2月9日提出8-Kで、2月8日時点の総保有量が714,644 BTCへと増加しました。
Strategy BTC Holdings Update on most recent SEC filing (source)
MicroStrategyのビットコイン購入資金の調達方法
MicroStrategyのビットコイン保有戦略の大きな特徴は資金調達方法です。同社は繰り返し資本を調達し、その資金でビットコインを購入しています。
最新の週次報告では、Strategy Inc.がATM株式発行による収入をビットコイン購入に直接使用していることが明記されています。
2025年第4四半期の報告資料では、資本市場が戦略の中心であることが強調されています。2025年には253億ドルを調達し、「米国最大の株式発行体」と自称しています(複数の優先株IPOも参照)。
同資料では次のようにも述べられています:
- ビットコイン保有を利用した「金融イノベーション戦略」を追求するビットコイントレジャリー企業であること
- 「AIを活用したエンタープライズ分析ソフトウェア」事業も並行して継続していること
株式・社債・事業キャッシュフローを組み合わせてビットコインを取得している点も強調されています。
読者への注意点として、MicroStrategyのBTC保有状況を評価する際は「ビットコイン価格の上下」だけでなく、発行株式数(希薄化)、債務や優先株の状況、ATM発行頻度なども追うことが重要です。これらがビットコイン関連株としてのリスク/リターンの構造を左右します。
MicroStrategyの財務諸表におけるビットコインの表示
MicroStrategyのビットコイン保有状況を理解するには、GAAP財務諸表上の会計処理の大きな変更点も重要です。
会計基準の変更:ASU 2023-08と公正価値評価
2023年12月、ASU 2023-08が発行され、該当する暗号資産について公正価値での評価と、各決算期の損益計算書での変動額の開示が求められるようになりました。
この基準の適用開始日は2024年12月15日以降開始の会計年度です。
MicroStrategyによる採用と報告上の変更
Strategy Inc.は2025年1月1日からASU 2023-08を採用し、これによりビットコイン保有分を公正価値で評価、その変動額を損益計算書で認識しています。
この会計処理の転換により、ビットコイン価格が大きく動いた場合に損益計算書の変動も大きくなります。2025年第4四半期報告では、デジタル資産における未実現損失として174億ドルが計上されており、公正価値会計を複数四半期適用済であることが明記されています(従来の「取得原価-減損」モデルとの対比あり)。
同社のKPI説明でも、公正価値会計により期中のビットコイン価格変動に応じて未実現損益が計上される可能性がある点が注意喚起されています。こうした影響は同社の非GAAP型KPI「ビットコイン・パー・シェア」などには必ずしも反映されません。
マイケル・セイラー:企業によるビットコイン導入の象徴
MicroStrategyのビットコイン戦略を語る上で、マイケル・セイラー氏は不可欠な存在です。同社のエグゼクティブチェアマン兼元CEOとして、ビットコイン業界で最も知名度の高い人物の一人です。
2020年以来、セイラー氏はビットコインを「究極の価値保存手段」と位置付け、デジタルゴールドとも比較してきました。彼の個人的な信念と同社の戦略は密接に連動し、ビットコイン追加取得のたびにメディアで話題となっています。
インタビューやSNS、公式声明を通じて、セイラー氏はビットコインを企業向け長期資産とする考え方を広めてきました。多くの投資家や暗号資産愛好者にとって、「セイラー氏とビットコイン」はほぼ同義語となっています。
市場が不安定な時も、セイラー氏の一貫した姿勢はビットコイン支持者の安心材料となる場合があります。MicroStrategyのアプローチが他社にも適用できるとは限りませんが、セイラー氏が企業によるビットコイン導入議論を世界的に牽引したのは事実です。
History of MicroStrategy Bitcoin Purchases (source)
MicroStrategyのビットコイン保有が投資家と市場へ与える意味
MicroStrategy(Strategy Inc.)は「ビットコイントレジャリー株」として注目されており、その情報開示は株主だけでなく、企業の暗号資産導入という大きな市場テーマにも影響します。
ビットコイン代理株としてのMicroStrategy
メディアやアナリストは、同社株式がビットコインへの「レバレッジ付きエクスポージャー」や代理的なエクスポージャーを与えると評することが多いですが、同社自身は資本構造や希薄化、債務・優先株の影響などにより、株価とビットコインの市場価値が大きく乖離する可能性を注意喚起しています。
理解すべき主なリスク
MicroStrategyのビットコイン保有状況を解釈する際は、ビットコイン価格リスクと構造的リスクを分けて考えることが重要です。
ビットコイン価格リスク: ビットコイン価格が平均取得価格を下回った場合、保有分の市場価値は取得総額を下回ることがあります(2026年2月初旬の開示時点など)。
構造リスク(資本構成): 同社のKPI開示では、ビットコインを含む資産が既存および将来の負債、優先株主の権利の対象となっていることや、義務履行のために株式やビットコインを売却する可能性があることが示されており、「ビットコイン・パー・シェア」の指標に影響を与えると注意されています。
集中リスク: SEC提出書類では、ビットコイン保有の集中が同社戦略のリスクを高めており、分散の欠如がリスク増大要因であることが明記されています(リスク説明文言として一般的な表現)。
影響力が続く理由
同戦略が革新的かリスキーか評価が分かれる中でも、MicroStrategy/Strategyが影響力を持ち続ける理由は「規模」です。世界初かつ最大規模のビットコイントレジャリー企業と明言し、他の企業より頻繁に詳細開示を行っています。
市場の動向として、2026年2月10日時点の同社株価は約138.44ドルで、ビットコイン保有や会計、資本調達に関するアップデートが注視されています。
MicroStrategyのビットコイン保有が暗号資産市場全体に与える影響
Strategy Inc.のビットコイン保有規模は、取引所・ETF・大手カストディアン以外では稀なレベルで、その情報開示は暗号資産市場にいくつかの具体的な影響をもたらします。
「企業導入」シグナルとしての注目度
大手上場企業が継続的かつ計画的にビットコインを取得・開示することで、「ビットコインは企業の財務資産」という認識が広がり、同社が自らビットコイントレジャリー企業と名乗り頻繁に開示することで市場全体のセンチメントに波及します。
実質的な需給要素
2026年2月8日時点の保有量714,644BTCは、市場関係者が同社による追加取得や売却の有無に注目するレベルです。週単位の取得が小規模でも(例:1週間で1,142 BTC)、今後も資本市場を利用した継続取得が「期待」されるだけで短期的な取引行動やセンチメントに影響します。
資本市場との連動:BTC↔株式市場のフィードバック
同社は株式発行で資金を調達しビットコインを購入するため、株式市場の状況とビットコイン需要が連動する「橋渡し」が生まれます。資金調達が順調なら今後も取得が続くと見られ、調達環境が悪化すればその期待が弱まる可能性もあります。また、多くの投資家が同社株式をビットコイン代理株とみなしているため、開示発表などによる株価の急変は広く暗号資産市場のセンチメントに波及します。
決算・開示が暗号資産の「マクロヘッドライン」に
公正価値会計(ASU 2023-08導入)により、同社の損益計算書はビットコイン価格の動向で大きく変動し、その結果、未実現損失の報道など大きなヘッドラインが生まれます。これがBTCや関連資産の短期ボラティリティにも影響します。
下落局面でのリスク論調の波及
価格急落時には、同社の平均取得価格と市場価格の比較やバランスシートへの影響がクローズアップされ、「クリプトウィンター」論調の一因となる場合もあります。こうした論調は、他のネットワークには直接関係なくともアルトコイン全体のリスク許容度にも影響します。
なお、Strategy Inc.自身も資本構造・債務・その他要因により株価がビットコインの市場価値と大きく乖離しうることを強調しており、MicroStrategyやマイケル・セイラーに関するヘッドラインがビットコイン現物供給量に直接影響しない場合でも、市場のセンチメントに波及する要因となっています。

Strategy Bitcoin Capital Structure (source)
MicroStrategyのビットコイン保有に関するFAQ
MicroStrategyは何BTC保有していますか? 2026年2月8日現在、Strategy Inc.は714,644 BTCを保有しています。
MicroStrategyの平均取得価格は? 2026年2月9日提出の8-Kによると、平均取得価格は76,056ドル(手数料等込み)です。
直近のビットコイン購入内容は? 2026年2月2日~8日の期間に、1,142 BTCを9,000万ドル、平均78,815ドル/BTCで購入しています。
暗号資産会計基準の変更による影響は? ASU 2023-08の適用により、公正価値での評価損益が損益計算書に反映されるようになり、大きな価格変動が収益の変動につながる場合があります。2025年1月1日以降、Strategy Inc.はこの基準に従い、適用後の期間に大きな未実現損益を報告しました。
MicroStrategy株式の保有=ビットコインの保有ですか? いいえ。Strategy Inc.は、同社普通株の保有がビットコインの所有権を意味しないこと、また株価が保有ビットコインの市場価値と大きく乖離する可能性があることを明示しています。
まとめ
MicroStrategyのビットコイン保有が大きく注目される理由は、その規模と開示頻度の高さにあります。2026年2月8日現在、同社は714,644 BTCを保有し、総取得額は543.5億ドル、平均取得価格は76,056ドル/BTCです。これらの数字は市場参加者にとってマクロ指標のような役割を果たします。
投資家がMicroStrategyの影響を考える際は、ビットコイン価格リスクと戦略・資本構造の側面を分けて捉えることが重要です。取得資金の調達方法や会計処理の違い、週次開示による市場心理への影響を考慮することで、単一企業のバランスシートが暗号資産市場全体に大きな影響を与える理由が見えてきます。





