
ブロードコムは6月4日(木)、第2四半期決算でEPSは市場予想を上回ったものの、売上高が予想を下回り、株価は15%下落して取引を終えました。EPSは2.44ドル(Refinitiv集計予想2.40ドル)、売上高は221.9億ドル(予想222.7億ドル)、純利益は前年同期比88%増の93.1億ドルとなりました。AI関連の売上高は108億ドルと、前年から倍増しています。各指標で力強い決算内容でした。
それでも株価は下落しました。主な理由は決算説明会で、CEOのホック・タン氏が通期の「1000億ドルAIチップ市場規模」目標を据え置き、次四半期のAIチップ売上高見通しを160億ドル(市場予想172億ドル)としたためです。市場はこれを、AI特需の一時的な調整局面と解釈し、株価は修正されました。
なぜ決算好調でも2年ぶりの大幅下落?
出典: Yahoo.Finance
最大の要因は「期待値」です。AVGOは直近2ヶ月で約28%上昇しており、AIチップ市場の成長が現実以上に織り込まれていました。アナリストは目標の上方修正(1150億~1200億ドル)があると予想していましたが、据え置き(1000億ドル)となり、次四半期見通しも市場の期待を下回ったことで、期待と現実のギャップが明確になりました。
ブルームバーグによる決算後の分析では、AVGOからの大きな資金流出は金曜取引開始後45分間に集中し、システマティック取引やモメンタムフォロー型の売りが中心となりました。長期保有型の売りは限定的で、事業基盤自体が揺らいだわけではなく、ポジション調整による動きと理解されています。
同様の事例は過去にもあり、AI関連の大型半導体銘柄が決算好調にもかかわらず二桁下落したのは2025年5月のNVIDIA決算が直近。今回も歴史的に見れば、AVGOの下落後の回復パターンは他の半導体銘柄とも類似しています(TradingViewでの主要半導体株の推移参照)。
1000億ドル目標据え置きの本当の意味
このAI関連売上高の市場規模(SAM)1000億ドルという目標は、2024年12月の決算説明会で初めて示されました。その際、ブロードコムの主要ハイパースケーラー顧客(Google、Meta、ByteDanceなど)への事業規模として説明され、追加顧客にも言及されていました。当初は控えめな目標と受け取られており、今後1年で上方修正されると見られていました。
今回据え置かれたのは、需要減という意味ではなく「調整局面(ダイジェスチョン・フェーズ)」の示唆です。ハイパースケーラー各社は2024年~2026年初頭にかけて大規模なASIC受注を行っており、現在はその出荷済みチップが実際のトレーニングや推論用ラックで稼働しています。次世代アーキテクチャ向けの追加注文は、仕様確定から納品まで12~18ヶ月要し、現在はその仕様策定段階です。
タン氏は「2027年までの需要見通しに基づき目標は据え置き、次の顧客コミットメントが得られるまでは上方修正しない」と述べました。これは調整局面に特有の表現であり、AI投資サイクルの終了を意味するものではありません。注文ペースが不規則で、次の加速フェーズが想定より遅れているということです。
NVDA、MRVL、TSMCへの波及効果
半導体セクターは木・金曜の2日間で時価総額約1兆ドル減少しましたが、影響は企業ごとに異なります。各社の収益構成やAIサプライチェーン内のポジション次第です。
NVIDIA(NVDA)は、商用GPUビジネスがAVGOのカスタムASICサイクルと分離されているため、構造的に下支えされています。ハイパースケーラー顧客はAVGOのASICだけでなく、NVDAのH200やBlackwellなどのGPUも並行して導入しており、NVDAの受注残高は引き続き高水準です。NVDAは2日間で約5%下落にとどまり、AVGOのガイダンスはカスタムASIC特有の事象との見方が示されました。
Marvell(MRVL)は、金曜1日で8%下落と最も大きな影響を受けました。これはMRVLのTrainiumやTPU向けカスタムASIC事業がAVGOと同じビジネスモデルであることが理由です。この文脈についてはAIエージェントの基礎解説(Academy記事)がAI計算基盤全体の中で詳細に解説しています。MRVLの次回決算(6月18日)が次の主要な指標となります。
TSMCはカスタムASICの製造基盤として間接的に影響を受けます。AVGOやMRVL、ハイパースケーラー直発注分のTSMCウェハー契約はすでに2026年まで確定済みですが、2027年のキャパシティ配分協議は今回の調整局面シグナルを踏まえて行われる見通しです。TSMC株価は4%下落と、構造的要因というより市場全体の連動によるものです。
AVGOのサポート水準
AVGOは金曜終値で約1510ドルと15%下落。今後のサポートラインは過去の揉み合い水準で明確です。
1470ドルが直近のテスト水準で、5月初旬の揉み合い安値であり、春期の相場調整時に買いが入った水準です。この1470ドルを維持し、2週間以内に1540ドルを回復すれば、決算後の下落調整局面は一旦完了と見なせます。
1400ドルが構造的な下値サポートです。2026年2月安値、DeepSeek関連の大きなボラティリティ収束時の水準です。1470ドルを割ると1400ドルまで早期に下押しする可能性が高く、その水準で長期的な見通しが確定するでしょう。1400ドルを明確に維持し、リカバリー時に資金流入があれば上昇方向のシナリオですが、1400ドルを割り込むと次は1280ドルが主な下値になります。
今後の重要イベントとしては、NVDAの第2四半期決算(8月27日)があり、これがカスタムASICサプライチェーン全体の期待値を再設定します。AVGOはこの間、AIセクター全体の動向やNVDAの決算内容によって値動きしやすい状況です。
よくある質問
AVGOの下落は投資機会か?
調整局面との見方が正しければ、需要回復が始まる第4四半期以降に投資を検討する投資家もいるでしょう。ただし、調整局面が2027年まで続き1000億ドル目標が据え置きまたは下方修正となるリスクも残ります。最適なエントリーポイントは1470ドルでの反発とAI受注動向が確認できてからです。
AI関連の設備投資サイクルは終わったのか?
いいえ。AI関連キャペックス(設備投資)サイクル自体は堅調で、主要ハイパースケーラー全体で年間2000億ドル超のペースが続いています。AVGO決算で示されたのはカスタムASIC層での注文ペースの不均一さであり、キャペックスの縮小を示すものではありません。商用GPUや推論用チップの需要も2026年まで高水準が維持されています。
Phemexのトークン化株式への影響は?
AI半導体銘柄を追随するトークン化株式商品(AVGO-USDTやMRVL-USDT)は、現物株式と同様に価格発見が進みます。NVDA-USDTは下落局面でも比較的堅調で、現状のAIセクター内で最も安定したロング銘柄と見なされています。
次の主なAVGO関連イベントは?
次回の決算発表は2026年9月初旬の第3四半期です。それまでに特定のハイパースケーラー顧客からのコミットメント獲得があれば、目標の上方修正の可能性がありますが、なければ半導体セクター全体やNVDAの動きに連動しやすい展開が続きます。
まとめ
ブロードコムは各種指標で堅調な四半期決算を発表しましたが、株価は15%下落しました。下落の主因は市場期待とのギャップであり、AI需要自体の崩壊を示すものではありません。SAM目標は据え置かれ、調整局面が継続している状況です。サポート水準は1470ドルと1400ドル。前者は短期的な取引水準、後者は中長期的な判断材料です。NVDAへの波及は限定的、MRVLへは大きめ、TSMCへの影響は小さい状況です。次の重要指標は6月18日のMRVL決算、8月27日のNVDA決算です。
本記事は情報提供のみを目的としています。投資判断はご自身の調査に基づき、リスクを十分ご理解の上でご検討ください。暗号資産取引には大きなリスクが伴います。






