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ATR(Average True Range)とは?

2021-05-20 10:39:23

要約

  • ATRは一定期間の市場の真の値幅を分解することでボラティリティを計測するインジケーターです。
  • また、ATRは市場への入退場のポイントを測ることもできるため、トレーダーはこれを用いて価格変動の予測やストップロスのポイントを見積もることができます。

ATR

ボラティリティは、市場の黎明期から存在する概念です。資産価格は需要と供給によって決定されますが、変動はかなり気まぐれです。仮想通貨市場はボラティリティが高いことで知られており、2010年代初頭にはその価格変動の大きさが話題になりました。

アナリストたちは数十年に渡ってボラティリティに関する研究を重ねてきましたが、未だに多くの市場において誤解をされている部分があります。仮想通貨におけるボラティリティも同様で、トレーダーや投資家、コミュニティメンバーの間で、同じように、あるいはそれ以上に混乱を引き起こしています。仮想通貨のボラティリティは誤解されがちですが、このような不確実性は仮想通貨市場に限ったことではなく、そのニュアンスを理解することでトレーダーは競争優位性を得ることができます。

仮想通貨市場におけるボラティリティとは?

一般的にボラティリティとは、過去の価格データから見られる変動を示す「認識されたボラティリティ」を指します。基本的にボラティリティが高いとその分リスクも伴うため、市場の状態がトレードに影響し、急な利益や損失を生みます。高いボラティリティはデイトレーダーやその他短期投資家にとっては非常に有益ですが、ビジネスや小売業者が仮想通貨市場から離れる最も大きな原因でもあります。

ボラティリティの低い通貨は比較的安定しており、ビットコイン(BTC)イーサリアム(ETH)テザー(USDT)のような安定コインなど、リクイディティが高くボラティリティの低い仮想通貨は、市場に参入する際のベース通貨として頻繁に使用されます。リスクを正確に測定することはほぼ不可能ですが、トレーダーは通常、様々なテクニカルインジケーターを用いてボラティリティの指標を追跡します。

ATR (Average True Range)とは?

1970年代後半に出版されたJ.ウェルス・ワイルダージュニアの著書「New Concepts in Technical Trading Systems」では、ボラティリティを測定するのに役立つテクニカルインジケーターとしてATR(Average True Range)が紹介されています。ATRは、一定期間の資産価格の真の値幅を分解して市場のボラティリティを測定します。

また、ATRは市場への入退場のポイントを測ることもできるため、トレーダーはこれを用いて価格変動の予測やストップロスのポイントを見積もることができます。ボラティリティはリスクを直接的に表すものではありませんが、分析してリスクを推定するのに役立ちます。しかし、リスクはボラティリティよりもはるかに捉えにくい概念です。

ボラティリティの高いデジタル資産は、人々が反応するよりも早く価値が大幅に変化する可能性があります。ボラティリティは、投資のリスクを完全に反映するものではありませんが、仮想通貨の取引や投資を行う前に考慮すべき主要な要素であることは間違いありません。ボラティリティは、投資のストーリー性にも重要な役割を果たしており、特にデジタル資産の場合はそうです。

すでに機関投資家は、仮想通貨のリスクが高いと思われていることから、仮想通貨を敬遠しています。実際、フィデリティ・デジタル・アセッツが行った投資家への調査では、ボラティリティが機関投資家の参入障壁の第一位となっています。アナリストの中にはこれを不確実性のせいにする人もいますが、実際にはポートフォリオ管理に関する専門的な洞察ではなく、心理的な障壁によってボラティリティをリスクと結びつけてしまう、根本的な投資の誤りに起因するものです。

ATRの計算方法

  • TRTrue Range=最大値[(H − L),絶対値(H − CP​),絶対値(L − CP​)]ATR=(n1​)(i=1)∑(n)​TRi​
    • TRi​=特定の真の値幅
    • n=期間

仮想通貨取引でATRを活用する方法

本質的には、ATRは一定期間のTR(真の値幅)の移動平均です。特定の期間において、TRは3つの異なる値のうち最も高いものを表します:高値と前の終値の差、現在の安値から前の終値を引いた値、そして現在の高値と現在の安値の差異です。

期間は通常14に設定されますが、トレーダーは観察された市場に合わせてこの数字を変更することができます。ATRは市場のボラティリティに関するシグナルを提供するだけで、市場が上昇しているか下降しているかは考慮していません。ATRが高ければトレンド相場であることを示し、値が低ければ市場の価格が硬直していることを示します。

ATRは当初商品市場で使用するために作成されましたが、その後トレーダーが市場の動きやトレンドを評価するために、他の分野でも使用されるようになりました。ATRは、パーセンテージベースの取引システムではなく、トレーダーが取引レンジを拡大・縮小することも可能です。

トレーダーはATRを使ってトレーリングストップを追加したり、反転を即座に検知することで、利益を保守することができます。上昇トレンドであれば、価格は最安値から3ATRまで上昇し、最高値から3ATRを下回ると下降トレンドへの反転を意味します。

暗号通貨市場のボラティリティは一部の人にとっては障壁に見えるかもしれませんが、多くの人にとっては魅力的なものです。プロのトレーダーの中には、そのボラティリティの高さ故に少ないスイングでより大きな利益を得られるという理由で仮想通貨市場に参入した人もいます。これにより市場にリクイディティがもたらされ、取引所でのスプレッドが縮小し、市場全体がより成長します。ボラティリティを追求するトレーダーが増えれば、古典的な投資は落ち着き、新しい資産はより魅力的になります。

ボラティリティは非常に影響力のあるものですが、恐れる必要はありません。投資家の中には、デリバティブ契約によって資産へのリスクを完全に回避しながら仮想通貨から利益を得ている人もいます。しかし、個人投資家、機関投資家を問わず、たとえボラティリティが高くなくても、リスクを分散させて管理することが重要です。

ブロックチェーンに投資する人が増えれば、仮想通貨のボラティリティが減少するだけでなく、資産の特性もより望ましいものになります。仮想通貨ポートフォリオ内のさまざまな資産が急激に上昇したり下降したりすることで、期間内のリターンが平均化され、安定して利益をあげることができます。多様な仮想通貨の投資により、ボラティリティははるかに管理しやすくなります。ボラティリティを特定する方法は数多くありますが、その中でも優劣があることは確かです。

ボラティリティの計測

ATRは市場のボラティリティを追跡するのに最も適しているインジケーターとは限りません。例えば、ATRはトレンドのある市場では長時間にわたって極端な位置に留まり、急激な変化を検出するのには適していません。デイトレーダーは、市場が公開したときにATRが急上昇することに気づくことがよくありますが、これは、一日のうちで最も変動の激しい時間帯だからです。しかし仮想通貨市場においては、ブロックチェーンは常に機能しているのであまり関係ありません。

週末に営業していない影響もあり、他の市場におけるボラティリティの測定はデジタル資産市場よりも少ないデータポイントを使用して機能しています。利用可能なデータ量が多いため、より不規則であっても暗号資産のボラティリティは測定がしやすいのです。しかし実際には、この違いはそこまで重要ではなく、週末の取引データを計算から除外しても、ボラティリティの測定値にはほとんど目立った変化はありません。

またATRは方向性を考慮していないため、ボラティリティが高いというシグナルは上昇または下降のいずれかを意味します。そのためATRは、移動平均や平均方向性指数(ADXなど、トレンドの方向性を予測する他のインジケーターと組み合わせて使用するのが好ましいです。

仮想通貨を取引する際のもう一つの問題は、世界中のほとんどの政府がこの市場を規制していないことです。これを利点と考える人もいますが、この分野が獲得できる投資家の見込み数は大幅に減少します。株式市場のボラティリティはそれほど大きな問題ではありません。市場のリクイディティは非常に高く、株価が下がりすぎた場合には「フォールバック・プライス」のような解決策があります。

インド最大の株式ブローカーであるZerodha社のコー・ファウンダー兼取締役のNikhil Kamath氏によると、”ATRが高くなるということは、指数がボラティリティを高めていることを示しており、このレベル付近での買いは賢明な判断あろう “とのことです。彼はまた、株式市場のボラティリティの計算ではどちらかの方向にどれだけボラティリティがあるかということよりも、指数がどれだけ動くかに焦点を当てていると指摘しています。

他のテクニカルインジケーター同様、ATRは仮想通貨だけのために開発されたわけではありませんが、使い物にならないというわけではありません。特に、強固なデリバティブ市場を持つ、最も古く流動性の高いデジタル資産であるビットコインのようなボラティリティの低い資産の場合、ATRは非常に役立つことがあります。デリバティブ市場の導入は伝統的に資産のボラティリティを下げるのに役立ってきましたが、これは当然のことながらビットコインにも当てはまります。

ビットコインのボラティリティは価格と連動しているため、ディップの直後はボラティリティが低下するとも言われています。これは、VIX(CBOEボラティリティ・インデックス)がS&P500の価格変動に反応し、ボラティリティとほぼ完全に負の相関関係を示しているのとは対照的です。

またデジタル資産を評価する基準が定められていないため、仮想通貨のボラティリティを計測することはあまり効果的ではありません。ブロックチェーン業界はFXや株式などの伝統的な市場に比べればまだ小さな存在ですが、お金を出す機関投資家が増えたため仮想通貨の時価総額は何年も前から急激なスピードで上昇しています。

ボラティリティvsリスク

人はもともとリスクを嫌うものであり、これは金融の世界でもよく知られています。しかし、ハイリスクは損失を意味する一方で、より高い利益をもたらすこともあります。特に成熟した市場では、私たちの損失回避志向は発生しうる潜在的な損失よりもはるかに大きいのです。リスクとボラティリティは確かに悪いイメージがあり、S&P500のボラティリティ指標であるVIXに対する「恐怖指数」という表現もこれを助長しています。

ボラティリティとリスクを同様に扱うことは的を得ていないだけでなく、危険をももたらします。インジケーターはボラティリティをある程度測定することができますが、リスクは非常に恣意的なものです。予期せぬ事態はいつでも起こりうるものであり、どのようなインジケーターもそれを予測することはできません。さらに、ボラティリティとリスクが同じであると考えると、ボラティリティの低い市場は価格が下落する可能性が低いということになりますが、外部環境は常に資産の価値に影響を与える可能性があります。

ATR はテクニカルアナリストのツールとして欠かせないものですが、その弱点を認識することはどこが優れているかを知ることと同様に重要です。ボラティリティをしっかりと把握していないと、ATRはポートフォリオに悪影響を及ぼす可能性があり、特に入場、退場のポイントをマークするために単独で使用された場合、ATRは悪影響を与える可能性があります。

しかし、ATRはトレーディング界で最も有名なテクニカル指標の一つであり、資産のボラティリティをシンプルなチャートで示しています。ATRは遅行性のインジケーターであるため、シグナルというよりもインサイトを提供し、過去のデータに基づいて出力を行います。いずれにせよ、ATRとボラティリティーの測定はあらゆるチャートを分析する際の基本的な要素であり、市場が実際にどのように機能しているかをより深く理解するための入り口となります。


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