
ホワイトハウスデジタル資産評議会を率いるパトリック・ウィット氏は、Consensus Miami 2026で、米国の戦略的ビットコイン(BTC)準備金に関する正式発表が「今後数週間以内」に行われる見通しであると述べました。米国は既に約328,372 BTC(現在価格で約240億ドル相当)を保有しており、これは開示されている中で最大規模の国家のビットコイン保有になります。今回新たに示された点は、今後この保有が恒久的なものとなること、さらに追加取得も検討されていることです。取得方法は、税金による購入ではなく、押収資産の活用による予算中立的な仕組みが予定されています。
これは、トランプ政権が2026年3月の大統領令以降、示唆してきた方針の公開確認です。その枠組みとなるのが米国準備資産近代化法(ARMA)であり、財務省と商務省に対し、一般会計に頼らない取得メカニズムの調査を指示する法案です。以下では、この政策が実際に何を意味するのか、押収資産の活用という法的枠組みがなぜ重要なのか、また正式発表時に想定される内容について解説します。
328,372 BTCという数字の意味
この数字は、米国政府が過去10年以上にわたり、刑事・民事の押収手続きで集積したビットコインの累積残高を指します。最大の寄与は「シルクロード」関連の押収であり、その後Bitfinexハッキング事案やダークマーケットからも加算されています。
これまで押収したビットコインは、米国連邦保安官局によるオークションで売却されるのが通例でした。しかし、2026年3月の大統領令でこの慣習が終了し、保有分は指定された準備金口座へ集約されました。ウィット氏が今回認めたのは、これが一時的な法執行の産物ではなく、連邦財政の恒久的な要素となったという点です。
1BTC=74,879ドル換算で、準備金価値は約246億ドルになります。これは公表されている企業や他国の保有を凌駕し、エルサルバドルの国家準備金を複数倍する規模です。今や「保有する」こと自体が強いシグナルとなり、明示的な方針として売却しない姿勢に転じています。
ARMA法案が実際に行うこと
米国準備資産近代化法(ARMA)は、大統領の保有方針を法定プログラムへ転換する立法車両です。この草案は、財務省・商務省に次の3つの要件を満たす取得方法の共同調査を指示しています。
| 要件 | 実務上の意味 |
|---|---|
| 予算中立 | 一般会計からの支出なし。新たな税負担もなし。取得費は押収資産や余剰口座から拠出。 |
| カストディ遵守 | 連邦資産の保管基準(有資格カストディアン、マルチシグ、定期監査)を満たすこと。 |
| 報告の透明性 | 保有状況は四半期ごとに財務省へ、年次で議会へ報告。 |
予算中立は政治的に極めて重要です。これは、「投資的なビットコイン購入に納税者資金は使われない」と正確に主張できる根拠となります。仕組みは新たな支出ではなく、既存の連邦資産の再分類に近いものです。
また、ARMA草案は「スワップ」メカニズム、つまり金や鉱物、外貨準備など他の連邦資産を市場レートでビットコインと交換する手法にも道を残しています。この部分は議会承認が必要となる可能性が高く、法的な議論の焦点です。ウィット氏は、当面は押収資産のみに基づく方式で発表を行い、スワップは将来的検討とする姿勢を示唆しました。
SECやCFTCによるコモディティ認定の動向とも関連し、過去約14か月で米国の政策姿勢は「執行重視」から「保有重視」へ大きく転換しています。
押収資産活用がなぜ重要か
法的な枠組みの違いが、誰がどんな根拠でプログラムに異議を唱えられるかを左右します。予算措置ベースの購入プログラムは議会承認が必須で、将来の議会の一票で撤回可能です。一方、押収資産の再分類は行政判断の範疇です。
2024年以来この構想を推進してきたルミス上院議員は、「政権交代後も保有が継続する」よう法制化することが立法目的であると明言しています。ARMAは、将来大統領が放出を望んだ場合でも議会承認を要する設計です。
国際的な影響も大きいでしょう。エルサルバドルやUAEのソブリンウェルスパイロットもビットコイン保有プログラムを運用していますが、G7で正式なコミットを発表した国はありません。米国の発表は、他国財務当局の議論を「ビットコインを保有すべきか」から「米国が積極的に保有する場合の適正ポジションとは」へと転換させるものです。
発表時に想定される形式
ウィット氏の「今後数週間」発言は、2026年6月中旬〜7月初旬のタイミングを示唆しています。発表形式は、過去のトランプ政権下の政策発表と同様に、ホワイトハウスまたは主要カンファレンスでの記者会見、財務省の共同声明が組み合わされると考えられます。
発表時に注目すべき3つのポイントは以下の通りです。
カストディ体制:準備金の保管方法は、財務省契約の有資格機関カストディアン、またはエネルギー省管轄の国立研究所によるコールドストレージ管理などが有力です。カストディ先の選定で制度設計の本気度が示されます。
追加取得トリガー文言:ARMA草案では「機会的な積立」とされており、具体的な取得タイミングの発表文言によって、市場参加者は制度が価格変動反応型か、それとも押収資産の流入に応じて定期取得する型かを見極めることになります。前者は価格変動が大きくなりやすく、後者は安定的な価格推移が期待されます。
SEC・CFTCとの協調:準備金プログラムは、現物ETF市場との関係性が未解決です。財務省が積立を開始し、現物ETFも成長する場合、2024年の半減期以降で最大規模の現物需要となる可能性があります。
価格への影響
短期的な価格インパクトは一部既に市場に織り込まれている可能性があります。ウィット氏の発言時には現物価格が約1.8%動いたことから、市場は正式発表の可能性を一部織り込んでいると考えられます。現在はETF流出が続いているため、準備金保有のシグナルは機関投資家のポジション調整で相殺されています。
中長期的には、積立方針が明示されることで供給に恒常的な下支えが生じます。制度的な積立が確立されれば、従来以上に価格の下支えが強化される可能性があります。これにより、機関投資家もより明確な政策指針のもと、資産配分を検討しやすくなります。
リスクとしては、制度実装の遅延が挙げられます。過去にも政策発表後、実際の運用まで長期間停滞した例があり、ARMAが可決されず委員会審議にとどまる可能性や、執行権限のみで可逆的な状態が続く懸念も残ります。発表自体の意義は大きいものの、制度化の進展が重要です。
よくある質問
米国は実際に328,372BTCを保有しているのか?
はい。押収記録および2026年3月の大統領令に基づき、米国保安官局などが管理するコインが指定口座へ集約されています。ただし、没収手続きの進捗により若干変動しています。
納税者資金でビットコインが買われることはあるか?
ARMA草案では、ビットコイン取得のための一般会計支出を明確に禁止しています。仕組みは予算中立で、押収資産や資産スワップのみを財源としています。
積立方針が発表されるとビットコイン価格はどうなるか?
積立方針が明示されれば、供給に恒常的な需要が生じます。規模や速度によりますが、長期的には循環枚数の減少により市場への影響が見込まれます。
将来の大統領が準備金を売却できるか?
現状、執行権限により方針転換が可能ですが、ARMA法案が成立すれば議会の承認が必要となります。
まとめ
米国は現在328,372BTCの保有を公表し、今後積立フェーズへの移行を示唆しています。執行から積立への政策転換は、2024年3月の現物ETF承認以来最大の変化です。特に予算中立かつ押収資産ベースの法的枠組みが、プログラムの安定性を高めています。
正式発表は6月中旬から7月初旬に行われる予定です。注目すべきはカストディ体制、追加取得トリガー文言、SEC・CFTCとの連携です。積立方針が明確になれば、ビットコインの価格下支え効果がより強固となります。
本記事は情報提供のみを目的としており、金融アドバイスや投資助言を行うものではありません。暗号資産取引にはリスクが伴います。ご自身で十分な調査を行った上で意思決定してください。






