2024年のイーサリアムは、一貫した技術的進歩を遂げたにもかかわらず、金融面では期待外れの結果となった。長年待ち望まれたDencunアップグレードが実施され、レイヤー2ネットワークの活動が4倍に急増し、スケーラビリティにおける画期的な進展となった。一方で、イーサリアムの金融パフォーマンスはビットコイン、ソラナ、さらには主要なミームコインよりも劣る結果となった。また、イーサリアムはソラナのようなレイヤー1競合に対して、開発者の関与やユースケースの面でも後れを取っており、特にソラナのミームコインが2024年の暗号資産市場を席巻している。
それでも、イーサリアムの持つセキュリティ、分散性、そして成長するレイヤー2エコシステムという強固な基盤は、今後の展望に対する楽観的な見方を支えている。現在のプロトコルには、より高速で安価かつアクセスしやすいソリューションを構築するためのツールが揃っている。最大の課題は技術革新ではなく、その実行にある。つまり、技術的な能力をどのようにして大規模な普及につなげるかが問われている。イーサリアムがその技術インフラを具体的なユーザー成長へと結びつけられるかどうかが、今後の軌道を決定づけるだろう。本記事では、レイヤー1ネットワークの短期的な課題と機会を分析し、それが長期的な展望に与える影響を検討する。
イーサリアム財団の論争
2025年1月20日のオンチェーンデータによると、イーサリアム財団(EF)は100ETH(約336,475ドル相当)を売却した。これは今年に入って2回目のETH売却であり、この取引はイーサリアムコミュニティ内でEFの財務管理および資産配分戦略についての議論を再燃させた。
批評家の中には、イーサリアム財団がETHを売却することが、ネットワークの「権威」に最も近い非営利組織の短期的な価格見通しに対する自信の欠如を示しているのではないかと疑問視する声もある。そのため、一部ではイーサリアム財団はETHを売却せずにすべてステーキングすべきだと主張し、利回りを享受しつつネットワークへの信頼を示すべきだと考えている。
この議論を受けて、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリンはEFの活動について公にコメントし、規制上の不確実性やハードフォークのリスクを理由に、ステーキングではなく売却を選択したと説明した。
これらの動きは、イーサリアム財団のリーダーシップ再編の最中に起こった。ブテリンは1月18日にX(旧Twitter)で、イーサリアムの進化に関する重要な優先事項として、dApp開発者の支援、分散化の推進、検閲耐性、ユーザープライバシーの向上を挙げた。また、EFが政治的ロビー活動を行わず、イデオロギー的な転換を避け、エコシステムの開発において中央集権的な役割を果たさないことを強調した。
しかし、こうした人事異動の背景には、EFの研究者がEigenlayerのような関連プロジェクトに関与することで利益相反が生じたことも影響している。2024年の終わりには、イーサリアムコミュニティが内外からの批判に直面し、岐路に立たされていることが浮き彫りとなった。
スケーリングの課題—レイヤー2による収益減少
イーサリアムの低迷は、価格の停滞だけでなく、オンチェーン取引手数料の急減にも現れている。2024年のDencunアップグレード後、レイヤー2の普及が進む一方で、イーサリアム本体の需要は低下し、ガス代は5年ぶりの低水準である1gwei以下に頻繁に落ち込んでいる。
この現象は、イーサリアムの技術的進歩と実際の利用状況とのギャップを浮き彫りにしている。ArbitrumやOptimismといったレイヤー2ソリューションは容量を拡張したが、その成長はイーサリアム本体のアクティビティ増加にはつながっていない。低料金はスケーラビリティの指標として歓迎される一方で、ユーザーがソラナのようなより速く安価な代替手段に流れている証拠ともいえる。
さらに、レイヤー2エコシステムの急速な拡大により、これらのネットワークがイーサリアム本体の手数料収入を奪っているとの懸念もある。オンチェーンデータによると、2024年夏にイーサリアムのレイヤー1収益は99%減少したが、年末までにはDencun前の水準まで回復した。
Pectraアップグレードの予定
イーサリアムにとってすべてが悲観的というわけではない。依然としてブロックチェーン開発の基盤であり、ベースレイヤーのアップグレードも着実に進んでいる。2025年2月には、Pectraアップグレードがテストフェーズに入る予定だ。このアップグレードは、スケーラビリティ、効率性、ステーキングの柔軟性を向上させることを目的としている。レイヤー2ソリューションのストレージ容量を増加させるとともに、トランザクション手数料の削減を実現する。
Pectraの最もユーザーフレンドリーなアップグレードの一つは、柔軟なガス料金の支払いだ。従来、イーサリアムのユーザーはETHでガス料金を支払う必要があったが、アカウント抽象化の導入により、PectraではUSDCなどのERC-20トークンを用いて手数料を支払うことが可能になる。これにより、トランザクションが大幅に簡素化され、ウォレットがスマートコントラクトのように機能し、ユーザーがトランザクションの処理方法をより細かく管理できるようになる。
さらに、PectraはPeer Data Availability Sampling (PeerDAS) を導入し、ノードがトランザクションデータを完全に保存することなく検証できるようにすることで、スケーラビリティを向上させる。この仕組みにより、ネットワークの効率が向上する一方で、セキュリティは犠牲にならない。また、PectraにはVerkle Treesという新しいデータ構造が組み込まれる。これは、Vector CommitmentsとMerkle Treesを統合したもので、データストレージの効率を向上させる。Verkle Treesにより、ストレージと検証が最適化され、バリデーターのデータ負担が軽減される一方で、ネットワーク情報への迅速かつ安全なアクセスが可能になる。
Pectraアップグレードは2つのフェーズで実施される予定で、最初のフェーズは2025年3月に公式に予定されており、2回目は2025年末から2026年初頭にかけて行われる。
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