予備知識
クロスマージンポジションの詳細な清算プロセスについては、次の記事をご覧ください。
マージン
Phemexの無期限契約取引において、マージン(証拠金)とは本来の取引の趣旨とは異なる目的に基づく取引者の資金の使用を指します。
特定のユーザーが開設したポジションには、必ず以下のマージンが含まれます。
- 必要証拠金(IM):ポジションを開く上で割り当てる最初の資金。
- 維持証拠金(MM):ポジションを維持するため、取引口座内に最低限保持する必要のある資金量。
- 分離マージン・クロスマージンのモード選択:分離マージンモードでは、ポジションに割り当てられる上限額がIM+MMに制限されます(手動で割り当てない限り)。実際には、IMはMMを既に考慮している値ですが、モデルの単純化のため本記事はそれぞれ別の要素として取り扱います。一方、クロスマージンでは、口座内の未使用資金をポジションへ割り当てることにより、清算処理を防ぐことが可能です。
※ ポジションの種類に応じたマージンの追加・削除の詳細な手順につきましては、「ポジションのマージンはどのように設定するべきか」をご参照ください。
取引口座にある資金の総額を「合計証拠金」と呼びます。合計証拠金は、以下の2種類に大別されます。
- 使用済証拠金:分離マージン・クロスマージンポジションを含むすべてのポジションに既に割り当てられている資金。
※ オーダーブックに表示されている未約定の注文であっても、キャンセルされるまでは合計証拠金から資金を取り込んだり使用したりすることが可能です。
- 未使用/共有証拠金:いずれのポジションや保留中の注文にも割り当てられていない(ただし、クロスマージンポジションが借り入れることは可能な)資金。
図1:合計証拠金のうち、使用済証拠金と未使用証拠金に当たる領域を示した概念図。この例では、1つの分離マージンポジション、3つのクロスマージンポジションを有するユーザーを表しています。4つのポジションのうち、2つには未確定の注文があります。ここでは、未確定の注文とポジションが合計証拠金の約半分を占めています。
図1
清算
清算とは、口座内の資金が維持証拠金を下回った場合に、ポジションを自動的に決済する処理のことです。清算についてより深くご理解いただくため、分離マージンとクロスマージンポジションにおけるプロセスを比較してみましょう。
分離マージン
分離マージンポジションでは、清算を防ぐことを目的に他の未使用資金を借り入れることができません。従って、資産の価格が予想に反して動くなどしてポジションの必要証拠金を使い果たし、資金が維持証拠金を下回った場合、そのポジションは自動的に清算または決済されます。
これが回避される要因としては、以下の2つがあります。
- 手動でポジションへマージンを事前に追加する。
- 取引した銘柄に未確定の注文があり、ポジションが最小維持証拠金を下回るような価格変動が生じた場合、システムはまず保留中の注文をキャンセルし、ポジションの資金を確保します。それでも資金が最小維持証拠金を満たすのに十分でない場合、ポジションは清算されます。
クロスマージン
クロスマージンポジションでは、同一取引口座内にある未使用の資金を利用して、清算を防ぐことができます。ポジションがマイナスの値動きにより維持証拠金を下回った場合、システムは自動的に未使用の資金を割り当て、ポジションの証拠金を元の水準(MM+IM)に戻します。なお、クロスマージンのポジションが未使用の資金を借り入れた場合、最低維持証拠金だけでなく、必要証拠金も充足可能な額の資金が必要となりますのでご注意ください。
PNLが下がり続けるなどして、未使用の資金をすべて使い果たし、なおかつ最小維持証拠金の要求値を満たすことができない場合、そのポジションは清算または決済されます。
繰り返しになりますが、保留中の注文に割り当てられた資金がある場合、システムはそれらをキャンセルし、清算を防ぐ試みを行います。
※ 本記事ではPNLがマイナスとなった場合を想定していますが、PNLがプラスであってもポジションの一部または全てが決済される場合があります。詳細は「Why was part or all of my position automatically closed?」をご確認ください。
複数ポジションの清算
複数のポジションを保有している場合、清算処理はより複雑になります。複数のクロスマージンポジションが共有証拠金から資金を借り入れなければならない場合、システムはポジションの優先順位を決定するため、一連の処理を実行します。
そのプロセスをご説明するため、図1の例をもとに想定される様々な状況について見ていきましょう。
例1:ポジション1(ETH)が清算される場合
図1において、ポジション1は孤立しており、共有資金を使用できません。そのため、持ち主が手動で追加のマージンを割り当てない限り、ポジション1が清算されたとしても他のポジションには影響を与えません。図2はこのときの取引口座の状態を示しています。(孤立ポジションの消失)
図2
例2:ポジション1(ADA)がMMを下回り、ポジション2、3のPNLがプラスの場合
図3
この場合では、ポジション1が未使用証拠金から資金を借り入れるだけでMMとIMを補完できるため、他のポジションはその影響を受けません。ただし、MMの要求値を満たすことができないまま、値動きにより未使用の資金をすべて消費してしまうと、ポジション1は清算されます。
図4
ポジション1が共有資金をすべて消費した場合、プラスの未実現PNLにアクセスすることができなくなります。ポジション1に追加の資金を割り当てる唯一の方法は、ポジション2、3のいずれかまたは両方を決済することです。プラスの未実現PNLが実現PNLになれば、クロスマージンポジションはそれにアクセスできるようになります。
例3:3つのポジションすべてに清算のリスクがある場合
図2を開始地点として、3つのポジションすべてがマイナスのPNLを有し、MMの要求値を下回った場合を想定します。このときの状況を図5に示します。
図5
複数のクロスマージンポジションが清算を防ぐために追加の資金を必要とする場合、システムはまずイベントの順番を優先します。システムはリアルタイムで価格を監視・更新しているため、最初にMMの要求値を下回った銘柄やポジションを検知し、最初にそこへ未使用の資金を割り当てます。その後、次のポジションが残りの資金から取ることになります。この一連の処理は、すべてのポジションのIMとMMが回復するまで、または未使用の資金が完全に枯渇して1つ以上のポジションが清算されるまで続きます。
一方、3つのポジションが同時にMM要求値を下回った場合は、システムはあらかじめ設定された記号の並び(ETH>ADA>LINK>…)に基づいてポジションの優先順位を決定します。
これらを踏まえた上で、今度は未使用の資金がポジション1と2を賄うのに十分ではあるものの、ポジション3のMM要求値を満たすには不十分である場合を想定します。(図6)
図6
前述のように、未使用証拠金の残高がポジション3の最小MMの要求値を満たすのに十分でない場合、システムは保留中のBCH注文をすべてキャンセルします。これにより新たに放出された資金と残りの未使用資金の合計がMMの要求値を満たすのに十分であれば、3つのポジションは清算されません。十分でなかった場合には、ポジション3が清算され、ポジション1と2のみが残ります。
※ 現在、BTC取引口座ではBTC決済のインバース契約のみを取り扱っているため、その他の取引についてここでは取り上げていません。未使用の資金や証拠金の共有は、各取引口座内に限定されます。従って、USD決済の契約のみがUSD取引資金を共有でき、BTC契約のみがBTC取引資金にアクセスできます。
※ 本記事では、清算のプロセスについてのみ解説しています。実際に適用される計算式については、「清算価格はどのように計算されますか?」をご参照ください。