前回の記事では、市場の厚みと分厚い市場、閑散市場の考え方について説明しました。流動的な市場とは参加している買い手と売り手に多くのオーダーを提供する市場のことです。また、BidとAskがどれだけ近いか、つまりスプレッドに関しても解説し、このスプレッドに対してオーダーがどのように蓄積されていくかにも触れました。
リクイディティの詳細 – 仮想通貨市場におけるリクイディティとは?
今回は、リクイディティの計測方法、そしてそれを用いてより精度の高いトレーディングを行う方法について解説しようと思います。
リクイディティを計測し、流動的、非流動的市場でトレーディングを始める
一般的に、分厚い市場または閑散市場でトレーディングを行う際に考慮すべきことがいくつかあります。閑散市場では、リミット注文を選択した方が良いです。閑散市場でマーケットオーダーを利用すると流動性を確保するための手数料を支払うだけでなく、多くのスリッページが発生するためコストが非常に高くなる可能性があります。このように、閑散市場ではスプレッドを乗り越えるためにかかる費用はより高くなります。
実際の取引と同じように、閑散市場のサイジングを減らす必要性についても議論されています。閑散市場はボラティリティが高い傾向にあるため、予期せぬ価格変動に対するリスクは高くなります。万が一ストップが残り2%しかないとしても、そのストップが空のブックに執行されるマーケットオーダーであればその損失はそこまで大きなものではありません。
分厚い市場においてはマーケットオーダーを利用するコストはおおよそ執行の保証に相応し、特にトレンドが素早く動いている場合はこの傾向は顕著です。非常に分厚いブックにリミット注文を出す場合、自身の方向に大きい逆張りがない、もしくは前もってオーダーを出さないと満たされないかもしれません。リミット注文を行うと、オーダーを作成した時間に基づいてキューに入れられ、優先順位がつけられることになります。つまり、同じ価格で取引を行おうとしている人の後ろに並ぶことになります。
デプスとリクイディティを観察する
オーダーブックと市場の深さを見ることで、簡単にデプスとリクイディティを把握することができます。下の画像では、オーダーブックだけでなくBidとAskが表示されたデプスチャートを見ることもできます。最も近いBidとAskの距離のことをスプレッドと言います。このデプスチャートは価格変動に合わせて頻繁かつ激しく変化することを理解しておきましょう。全体的には、現在の市場価格と比較して残りのリクイディティが有効かどうかを見極めることができます。
一般的には、薄くてボラティリティの高い資産では、下のICXチャートのように最小限の深さと広いスプレッドが見られます。
スプレッドは約100ポイントで、デプスは極めて浅いです。板が薄い場合マーケットの管理者はリクイディティを与えることに積極的ではなく、買い手と売り手の情報により依存した問題の多い取引となっています。
デプスにBidとオファーの蓄積が見られる場合の利点は、これらの直前のレベルがサポートまたはレジスタンスとして働く可能性があることです。これは、リクイディティが高く価格変動を鈍らせる可能性があるエリアです。一般的に市場が薄いほど動きやすく、厚いほど動きが鈍くなるという傾向は理解しやすいのではないでしょうか?
リクイディティの高いところから低いところへ行くと価格変動のスピードに変化が起こるはずです。
上記のように、市場の厚みは価格変動によって劇的に変化する可能性があり、積み重なっているように見えるレベルがただの錯覚である場合もあります。このようなリクイディティの残像は単なる宣伝であり、すぐに変化する可能性があることを注意する必要があるでしょう。また、この宣伝が市場操作に利用されることもあります。これについては次回の「なりすまし」の記事でご紹介します。
では、これが誤った宣伝になりやすく絶えず変化しているとしたら、リクイディティを観察しそれを利用する方法が他にあるのでしょうか?
CVD (Cumulative Volume Delta)を利用する
このツールは少し高度なものなので、わかりやすくするために、ここでは詳しく説明しません。
CVDインジケーターとは?
CVDとはCumulative Volume Delta(累積出来高デルタ)の略です。これはBid(買値)とAsk(売値)で発生した注文の累積を表します。デルタとは、積極的な買い手と積極的な売り手の差異のことです。“積極的な注文”とはいわばマーケットオーダーのことです。例えば、もし1000万本のローソク足の中で、Askに600万、Bidに400万の注文があった場合、デルタは200万となります。つまり、売り手より買い手の方がより積極性があるということになります。
それぞれのキャンドル足にはそれぞれのデルタが存在するため、CVDは単に一定期間のそれらを全て合計したものになります。通常これは価格を追従するものになりますが、それがどこで逸れたかを判断することができます。下のチャートは、一般的なローソク足チャートとCVDです。
CVDの利用方法
CVDは市場の買いと売りの合計なので、市場のどちらの側面が優勢かを見ることができます。片方の市場の勢いが強いにもかかわらずそれが価格に反映されていないとすれば、その部分にリクイディティが集中している、つまり摩擦が生じていると言えるかもしれません。また、CVD/デルタの変化は小さいが価格の変化が大きい場合はその逆も言えるでしょう。
例えば、2本のローソク足のデルタと出来高が全く同じで、範囲が異なる場合を考えてみましょう。この場合、範囲の広いローソク足の方が、リクイディティが高く注文に対する抵抗がないことが予測されます。
これを作業と結果を判断するためのものだと考えてみてください。下の図面に記されているように、図の右に向かうほどCVDが大きくなっています。これは買い手よりも売り手の方が積極的だったことを示しています。価格は上昇せず、それより先にレジスタンスが現れました。これは明らかにリクイディティが高い領域であり、それゆえにレジスタンスとして機能しています。
逆にCVDよりも価格の方が活発に動いている場合は、リクイディティが低く圧力が少ない領域であると予測できます。これは、CVDが徐々に折り返し、価格は劇的に変化している右側の四角形の枠の後に見られます
CVDのようなツールの利用や取引量によって起こる価格変動の観察はレベルやリクイディティの量をモニタリングする上で有効な手段です。CVDはオーダーフロー取引を行うトレーダーが方向転換に繋がるサポートやレジスタンスレベルを生み出すために使用するツールです。例えば、価格がサポートレベルを維持している間にCVDが下降し続けているとすれば、売り手が安価でより大きな力に捕らえられたと予測することもできます。そのため、リバーサルの可能性が浮上してきます。
これらはリクイディティの全体的なレベルと、リクイディティが変化する特定のエリアを観察するための手法やツールです。次回は「スプーフィング(なりすまし)」について掘り下げて行こうと思います。